私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?

2-14 逃げろ!

「さってと。お腹も膨れたことだし……クロードの姿でも探しに行ってみようかな?」


 バサリと大きな羽を広げると私はフワリと空に舞い上がり、離宮に向かって飛んだ。
 森よりも遥かに飛んでいくと、やがて眼下に美しい城が見えてきた。

「やっぱり空を飛ぶって気持ちいーい! 最高! そう言えば魔法使いも言ってたっけ。空を飛ぶのは最高に気持ちがいいって」

 私は城に近付くと、今度は周囲を旋回するようにぐるぐる飛び回った。城の窓という窓を覗きこみ、やがて一際大きくて立派な部屋を見つけた。

「うわ~。立派な部屋だわ! きっとこの部屋がクロードの部屋に違いないわね!

 バルコニーにヒラリと降り立つと、私は早速部屋の中の様子をこっそり伺うことにした。 
 何しろ今の私はクロードに嫌われている?ようだから見つかったら追い払われてしまうかもしれない。

「さてと~……クロードはいるかしら?」

 大きな掃き出し窓から部屋の中をじっくり見ても、生憎クロードの姿は見当たらない。

「誰もいないわね…‥でも、ここがクロードの部屋とは限らないし……客室の可能性だってあるものね」

 きっとこの部屋では無いのかもしれない。そこで別の場所を探そうと思い、部屋の中を覗きながら羽をバサリと広げた時……。

「うん?」

 ベッドが盛り上がっていることに気が付いた。

「あら? 誰かベッドで寝ているのかしら?」

 そこでベッドの上を確認するべく、羽を広げて窓のてっぺんまで飛んだ時……。

「え!? クロードッ!?」

 何とベッドの上でクロードが寝ている姿が目に飛び込んできた。

「え? 一体どういうこと? まさか昼寝……何てはずないわよね? あ~ん! もっと近づければ様子を確認することだって出来るのに!」

 ホウホウと鳴きながら窓の外を飛び回っていると、部屋の扉が突然開かれる様子が見えた。
 そして部屋に入って来たのはまるでウェイターのような黒の背広姿の人物だった。手には銀の洗面器を手にしている。

「あ! あれは……もしや、フットマンと呼ばれる人物なのでは?!」

 すごい! この世界でファンタジー世界に住んでいる王子様や魔法使い、それにフットマンにまで出会えるなんて!

「っていうか……何故洗面器を持って……はっ! もしかして……!」

 水の入った洗面器を持って現れたということは……ひょっとしてクロードは熱でもあって寝込んでいるのだろうか?

 思わず、バサバサ羽をはばたかせながらホウホウと喉を鳴らしてしまった時……。
 フットマンが突然私の方をジロリと睨みつけて来た。そしてベッドサイドテーブルに洗面器を置くと、こちらへ向かって近付いて来る。

 ま、まずい!

 野性の勘?で危険を察知した私はそのまま羽を広げて一目散にその場を離れた。

「クロードが最近庭に姿を見せないってことは熱でもあって寝込んでいたからかもしれないわね……重い病気じゃなければいいけど‥…」

 クロードのことを心配しながら、私はねぐら? へ向かって飛んだ――

 
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