私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?

2-19 無理とは言わせない

「でもどうだい? これで分かっただろう? 『シルフィー』がかなりヤバいところに生息するハーブだって言うことが」

 魔法使いはチョンと人差し指で私の頭をつついた。

「ええ、それは分かったけど……ちなみに、さっきの映像の場所は何処にあるの?」

「ああ、それなら分かりやすいよ。あの山の上の頂上だから」

 魔法使いが指さした先にそびえ立つ山が見える。

「あの山の頂上の映像が先程サファイアに見せた場所だよ。どうだい? それほど遠くないだろう? う〜ん……多分半日も飛び続ければ辿り着けるんじゃないかな? あの山の麓までは」

 魔法使いはとんでもないことをサラリと言ってのける。

「そんな……半日なんて飛び続けられっこないじゃない!! 何度も休憩を入れなけれは飛べるはずないわよ! それにハゲタカってとっても飛ぶのが早いじゃない! 映像で見る限りは私なんかじゃあっという間に追いつかれちゃうわよ! おまけに地上には狼もいるし……。それどころかド、ド、ドラゴンまでいるじゃないの!」

「そうだよ、だから『シルフィー』は皆喉から手が出るほど欲しいのに、手に入れることが出来ないのさ。だから幻のハーブとも言われているんだけど……え!? な、何その真剣な表情は……ま、まさか本当に採りに行くつもりなのかい!?」

 私の真剣な目つきに魔法使いは本気だと気付いたようだ。

「当然じゃない。だって、クロードは喘息の発作が酷くて食事も喉を通らないっていうじゃない。何とかしてあげなくちゃ……」

 喘息の苦しみは私も分かる。何故なら私自身、小児喘息を患っていたからだ。

「それに、『シルフィー』を取ってクロードに感謝されれば、私は元の姿に戻れるかもしれないんでしょう?」

「だ、だけど、あんな危険な場所に咲いているんだよ? 無事に取って来れると思っているのかい!?」

 何故かいつものヘラヘラした様子とは違い、焦った様子の魔法使い。

「大丈夫だってば、だって偉大な魔法使いがついて来てくれるんでしょう?」

「え?」

 私の言葉に魔法使いが間の抜けた返事をする。

「何よぉ? か弱いフクロウの私がたった1羽で、あんな危険地帯に行けるはずないでしょう?」

「無理無理無理無理!! 無理だってば! 僕は絶対行かない……と言うか、あんなところ行けるはず無いから!」

 「無理」ということばを5回も連呼する魔法使い。

「どうしてよ!! 貴方は私を手違いで呪いに掛けたようなものなんだから! 少しは手伝いなさいよ!! それに偉大な魔法使いならドラゴンくらい、どうってこと無いでしょう!!」

 私は文句を言いながら、高速で突き攻撃をする。

「痛い痛い痛い痛い!! だ、だから突っつかないでくれないかなぁ!! わ、分かったよ! 一緒には行けないけれど……え、遠隔でサポート位ならしてあげるから!!」

「ど・う・し・て!! 遠隔でサポートになるのよ! 一緒にくるのが筋でしょう!!」

「だ、だからそれは無理なんだってば〜!!」

魔法使いの悲鳴が森にこだまする――
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