私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?
3−10 クロード画伯
「そうなの? クロード様はミルクちゃんには猫アレルギーが出ないのね? だったら都合がいいわ」
アビーが嬉しそうに笑う。
「ニャンニャンニャーン」
私も嬉しくて、つい歌を歌う。
「それじゃすぐにクロード様のお部屋に行かなくちゃ。またね、ジャック!」
アビーはそれだけ言うと、足早にジャックから離れていく。
「え!? う、嘘だろう?アビー! さっきの続きは!?」
背後ではジャックの虚しい叫びが聞こえている。
フフン、どうよ? 私のアビーの唇を奪おうとするなんて10年早いわ。おととい来やがれって言うのよ。
「アビーッ!」
そしてジャックの声は遠くなっていった――
**
「ここがクロード様のお部屋よ」
アビーが足を止めたのは白い扉に金のドアノブが着いた部屋だった。
「ニャンニャニャニャニャニャン?」
(ここにクロードがいるのね?)
私はアビーを見上げてニャンニャン鳴いた。
「フフフ……。本当にミルクちゃんは私の言葉が分かっているみたいね」
アビーは掃除道具を床に置くと私の頭を撫でてくる。その心地よさに私も喉をゴロゴロ鳴らす。
「それじゃ、ノックするわね」
「ニャン!」
(ええ!)
――コンコン
アビーがノックをすると、扉の奥から声が聞こえてきた。
『誰だい?』
おお! あの声は紛れもなくクロードの声だ!
「私です。メイドのアビーです。寝具の交換とお掃除に参りました。中に入っても宜しいでしょうか?」
アビーが扉に向かって声を掛ける。
『いいよ、どうぞ』
「失礼致します」
その言葉にアビーは扉を開けると、両手に掃除道具を持ってクロードの部屋の中に入っていく。
するとクロードは部屋の中央でイーゼルに立てかけられた大きなキャンバスで油絵を描いているところだった。
それは湖とお城を描いた風景画でとても美しかった。
うわぁ〜……クロード。すっごく上手……。
私には絵心が全く無いので、クロードの絵に思わず見入ってしまった。
「今回も素晴らしい絵画ですね。クロード様」
ベッドシーツを交換しながらアビーが声を掛ける。
「ありがとう、今回はミゴール伯爵夫人に頼まれた絵画なんだ。もうほとんど完成だよ」
「そうなのですか?」
「うん……だけどね……」
何故かクロードの表情は暗い。
「クロード様?」
「次はルノー侯爵に絵画を頼まれているんだけど……困ったことになっているんだ」
クロードがため息をついた。
「どうされたのですか?」
「ルノー侯爵は大の猫好きで、猫の絵画を描いて欲しいと頼まれているんだよ。だけど、僕は猫アレルギーだろう? 実物の猫を見ないで描く自信が無いんだ。だから断ろうかと思っているのだけど……ルノー侯爵は上客だからね。彼のお陰で社交界の色々な話も知ることが出来てるし」
何? 猫の絵画が欲しい客がいるですって?
アビーのポケットの中で私は耳をピクピクサせた。するとアビーもすぐに気付いたのだろう。
「クロード様、そう言えばバルコニーで保護した猫は触れても喘息が出なかったそうですよね?」
「ん? ああ、そう言えばそんなことがあったかな?」
「だったら、この子をモデルにしてみてはどうですか?」
「ニャン!」
アビーの言葉と同時に、私はポケットから顔を覗かせてクロードを見つめた――
アビーが嬉しそうに笑う。
「ニャンニャンニャーン」
私も嬉しくて、つい歌を歌う。
「それじゃすぐにクロード様のお部屋に行かなくちゃ。またね、ジャック!」
アビーはそれだけ言うと、足早にジャックから離れていく。
「え!? う、嘘だろう?アビー! さっきの続きは!?」
背後ではジャックの虚しい叫びが聞こえている。
フフン、どうよ? 私のアビーの唇を奪おうとするなんて10年早いわ。おととい来やがれって言うのよ。
「アビーッ!」
そしてジャックの声は遠くなっていった――
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「ここがクロード様のお部屋よ」
アビーが足を止めたのは白い扉に金のドアノブが着いた部屋だった。
「ニャンニャニャニャニャニャン?」
(ここにクロードがいるのね?)
私はアビーを見上げてニャンニャン鳴いた。
「フフフ……。本当にミルクちゃんは私の言葉が分かっているみたいね」
アビーは掃除道具を床に置くと私の頭を撫でてくる。その心地よさに私も喉をゴロゴロ鳴らす。
「それじゃ、ノックするわね」
「ニャン!」
(ええ!)
――コンコン
アビーがノックをすると、扉の奥から声が聞こえてきた。
『誰だい?』
おお! あの声は紛れもなくクロードの声だ!
「私です。メイドのアビーです。寝具の交換とお掃除に参りました。中に入っても宜しいでしょうか?」
アビーが扉に向かって声を掛ける。
『いいよ、どうぞ』
「失礼致します」
その言葉にアビーは扉を開けると、両手に掃除道具を持ってクロードの部屋の中に入っていく。
するとクロードは部屋の中央でイーゼルに立てかけられた大きなキャンバスで油絵を描いているところだった。
それは湖とお城を描いた風景画でとても美しかった。
うわぁ〜……クロード。すっごく上手……。
私には絵心が全く無いので、クロードの絵に思わず見入ってしまった。
「今回も素晴らしい絵画ですね。クロード様」
ベッドシーツを交換しながらアビーが声を掛ける。
「ありがとう、今回はミゴール伯爵夫人に頼まれた絵画なんだ。もうほとんど完成だよ」
「そうなのですか?」
「うん……だけどね……」
何故かクロードの表情は暗い。
「クロード様?」
「次はルノー侯爵に絵画を頼まれているんだけど……困ったことになっているんだ」
クロードがため息をついた。
「どうされたのですか?」
「ルノー侯爵は大の猫好きで、猫の絵画を描いて欲しいと頼まれているんだよ。だけど、僕は猫アレルギーだろう? 実物の猫を見ないで描く自信が無いんだ。だから断ろうかと思っているのだけど……ルノー侯爵は上客だからね。彼のお陰で社交界の色々な話も知ることが出来てるし」
何? 猫の絵画が欲しい客がいるですって?
アビーのポケットの中で私は耳をピクピクサせた。するとアビーもすぐに気付いたのだろう。
「クロード様、そう言えばバルコニーで保護した猫は触れても喘息が出なかったそうですよね?」
「ん? ああ、そう言えばそんなことがあったかな?」
「だったら、この子をモデルにしてみてはどうですか?」
「ニャン!」
アビーの言葉と同時に、私はポケットから顔を覗かせてクロードを見つめた――