私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?

3-11 寝落ちする私

「あ! その首に巻いてある黄色いリボンは……!」

 クロードは私を見て目を丸くした。

「え? もしかすると…‥‥この黄色いリボンは……?」

「そうだよ、僕がその猫に巻いてあげたんだ」

 アビーの言葉に頷くクロード。

「そうだったのですが……ミルクちゃんはこのリボンがとても気に入っているのですよ? お風に入れてあげるときは取ってあげているのですが、入浴後は必ずこのリボンをつけたります。ね? ミルクちゃん」

「ニャン! ニャンニャニャニャン!」
(ええ! だってクロードからのプレゼントだもの!)

「へ~…すごいな……本当に人の言葉を理解しているようだ……。それにさっきからこの部屋に猫がいるのに、少しも喘息の症状も出て来ないのだから不思議な猫だね」

 クロードが私をじっと見つめる。

「クロード様、その原因はもしかすると‥‥…シャンプーのせいかもしれませんよ?」

 仕事の手を動かしたままアビーが答えた。

「シャンプー?」

「はい。普通の猫はお風呂に入るのをとても嫌がるのですが、ミルクちゃんは別です。お風呂とシャンプーがとても大好きなのですよ?」

「え? ミルク? あぁ、そうか。その猫……ミルクって名前を付けたんだね?」

「はい、そうです。ミルクみたいに真っ白ですから。私達メイドで毎日交代でお世話をしているのですよ」

 そしてアビーは私が一番触って貰うのが好きな場所……顔を指で撫でて来る。

 う~ん。そこが一番いい場所なのよね~……。
 思わず目が細くなって、喉がゴロゴロと鳴る。

「……僕も……な、撫でてみても……いいかな……?」

 少しの間、クロードは私とアビーの様子を見ていたけれども躊躇いがちに声をかけてきた。

「ええ、勿論です」

 頷くアビー
 何? クロードが私を撫でてみたいですって!? その言葉に私の耳がぴくぴく動く。

「それじゃ、ミルクちゃん。クロード様の所へ行ってあげて?」

「ニャーン」
(いいわよ)

 アビーが私をポケットから取り出し、ストンと床に降り立つとクロードの元へと歩いた。

「ニャーンニャンニャン?」
(さぁ、好きなだけ触っていいわよ?)

 そして私はクロードをじっと見上げる。クロードは少しの間私を見つめていたけども、やがて私を両手で抱き上げると、椅子の上に下ろした。

「そ、それじゃ……撫でてみるよ……」

 クロードは私の頭に手を乗せると――

 サワサワサワ……

 絶妙な力加減で撫でて来た。おおっ! 撫でるの上手じゃない!

「ナァ~ン」

気持ちが良くて、甘えた声で鳴く私。

「まぁ。クロード様。撫でるのお上手ですね? そう言えばミルクちゃんは背中を撫でられるのも好きですよ」

 アビーがアドバイスする。

「せ、背中だな……? よ、よし……」

 今度はクロードの手が私の背中を撫でてきた。

 う~んこれも素晴らしい撫で方だ。ひょっとするとクロードはブリーダーの素質があるかもしれない……。


 そんなことを思いながら、クロードの絶妙な力加減で撫でられていた私。

 やがてあまりの気持ちよさに、そのまま寝落ちしてしまった――



< 62 / 100 >

この作品をシェア

pagetop