私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?

4-3 尻尾が垂れる私

 今の私は超大型犬。
 身体の細いクロードを背中に乗せて歩く位はどうってことないはずだ。

「ワンワンワンワンワンワンワン!」
(クロードを私の背中に乗せて!)

 尻尾をぶんぶん振って私は3人のフットマンに訴えた。

「おい、何だって言うんだ? この犬……」
「どうやら威嚇しているわけでは無いな」

 すると、ジャックが私の目をじっと見つめながら尋ねてきた。

「もしかして……クロード様を乗せろと言ってるのか?」

 おおっ! 何とジャックに私の気持ちが通じた!

「ワン!」
(そうよ!)

 ブンブン首を縦に振って、ついでに尻尾もフリフリする。

「そうか。よし分かった。2人とも、今すぐクロード様をこの犬の背中に乗せよう!」

 ジャックは2人のフットマンを振り返った。

「え? ほ、本気なのか? ジャック!」
「そんな…‥クロード様を犬の背中に乗せるなんて……」

 明らかに2人は躊躇っている。するとジャックがナイスな発言をした。

「何を言っているんだ? 馬の背中に乗せるのだって、犬の背中だって同じだろう? 今は一刻も早くクロード様をお運びしなければ!」

「あ、ああ!」
「そうだな!」

 2人は頷くと、すぐにクロードは抱きかかえられて私の背中に乗せられる。

 ズシッ!

 クロードが私の背中に乗り、重みが身体に伝わってくる。
 うう……さ、流石に少し重い……けどこれも全てクロードを助ける為。

「おい? 大丈夫か?」

 ジャックが心配そうに私に尋ねてくる。何のこれしき。

「ワン!」
(もちろんよ!)

「よし、それじゃ行くぞ!」

 ジャックに促され、クロードを背に乗せた私は3人のフットマンたちと一緒に部屋を目指した――



**


「よし、それじゃクロード様をベッドに寝かせよう」
「ああ」
「慎重にな」

 部屋に到着すると早速私の背中からクロードが下ろされ、慎重にベッドに寝かされた。

「クロード様、すぐにお医者様を呼んで参りますからお待ちくださいね」

 黒髪のフットマンは意識の無いクロードに声を掛けると、足早に部屋を出て行った。

「それじゃ俺は水を運んでくるよ。ジャック、お前はどうする?」

 声を掛けられたジャックはクロードを見つめたまま返事をした。

「俺はここでクロード様を診ているよ」

「ワン!」
(私も!)

 すると、何故か2人のフットマンは私を見つめる。
 
 え……? ちょ、ちょっと何? その目は……。

「お前は出て行くんだよ」

 ええっ!? 何でよ!

「ああ、具合が悪い人の側に動物は駄目だ」

 ジャックまで人でなしの台詞を言う。

「そうだな、お前は廊下で待っていろ」

 赤毛のフットマンが扉を指さす。おのれ……2人とも。別に部屋の隅っこでもいいからいさせてくれればいいのに。
 けれどここで騒ぐわけにもいかず、私はがっくり項垂れると渋々扉へと向かった。


 長い尻尾を下げながら――
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