私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?

4-11 焚き付けてるの?

「あ、あらそう? でも、そんなこと言われても貴方が私にしたことがチャラになるわけじゃないからね? それよりも怖いから早く地上に下ろしてよ!」

 魔法使いを睨みつけてやると彼は肩をすくめた。

「分かったよ。美人が睨むと迫力あるよね」

 そして再びパチンと指をならす魔法使い。すると途端に場所が代わり、私と彼は広大な庭の中に立っていた。綺麗に敷き詰められた石畳、円形の大きな花壇には美しい花々が咲き誇り、ランタンで照らし出されている。更に眼前には美しい城が見えていた。

「ウワ〜! 綺麗……! まるでシンデレラ城みたい!」

「シンデレラ城? 何だい、それは? いいかい、あの城はね……君を裏切った王子が住んでいる城だよ」

「え!? まさかあのギルバート王子がここに住んでるの?」

 思わず魔法使いを振り返った。

「そうだよ、侯爵令嬢である君に呪いを掛けて苦労させているのに彼はあんな立派な城に悠々自適に暮らしているんだよ? 酷い話だと思わないかい」

 何故か魔法使いは私を焚きつけるような言い方をする。

「まぁ、確かにそうよね。理不尽な理由を付けてサファイアに一方的に婚約破棄を言い渡したのだから。あれはちょっと無いわね」

「え? どうしてサファイアはその話を知ってるんだい?」

「ええ、実はちょっと夢で見たのよね……」

「夢? 一体どんな?」

 そこで私は魔法使いに自分が見た夢の話を説明した。


**

「ふ〜ん……なるほど。そんな夢を見たのか……もしかすると、本物のサファイアはまだその身体の中で眠っているのかもしれないね」

「え? そうなの?」

「良く分からないけれど、実際記憶がない君がサファイアの過去の出来事を夢で見たということは、多分そういうことなんじゃないかな」

「何だ。結局はっきりしたことは分からないんじゃない。それで? 何故ここへ連れてきたの?」

「うん、自分を不幸に追いやった王子の居場所を知っておいたほうがいいかと思ったんだよね。君をわざと悪女に仕立てて、自分は意中の女性と婚約したのだから。許せないだろう?」

 何故だろう? やはり魔法使いは私にギルバート王子への怒りを募らせるように仕向けている気がする。ひょっとして、彼自信も王子へ何か遺恨があるのだろうか?

「ねぇ? 魔法使い」

「何?」

「ひょっとして……ギルバートに何か恨みでもあるの?」

 「!」

 すると、一瞬魔法使いの顔色が変わった……気がする。

「え? いやぁ〜……別に恨みは無いかな?た だ人使いが荒い雇用主だけどね」

「そうなの?」

 私から見ると魔法使いは非常〜に暇そうに見えるけど?

「うん。まあね……ところで、そろそろ元の場所に戻ろうか? 時間切れになってきたみたいだし」

「え? 時間切れ……? ああっ! な、何これ!」

 気付けば私の腕はいつの間にか元の真っ白な毛むくじゃらの腕に変わっている。

「魔力切れだよ。サファイアに掛けた人へ戻る魔法が切れたのさ。よし、戻ろうか?」

魔法使いがパチンと指をならすと、再び一瞬で目の前の光景が代わる。


「あ、ここは……クロードの部屋だわ……ってえ? 魔法使い? 何処よ!」

 気付けば魔法使いの姿はそこにはない。

「何よ。いつも突然現れて……突然消えてしまうのだから」

 フン! と鼻を鳴らした私は再び床の上にうずくまった。

 それにしても、遅いわね。クロード……。

 気付けば、私はいつの間にか眠りに就いていた――
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