私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?
5-3 お別れなの?
「そうだったの……? そんな事情があったの……?」
私の言葉に魔法使いはコクリと頷く。するとエメラルドさんが尋ねてきた。
「それで? 無事に人間に戻れたサファイアはこれからどうするの?」
「え……?」
そう言えば、私は今後のことを一切考えていなかった。大体サファイアの記憶が何も無いのに、あの屋敷に戻るなんて……かといって、クロードの元へ戻るわけにもいかない。
すると魔法使いが当然のように言った。
「決まっているじゃないか。サファイアは屋敷に戻るんだろう? 実際お父さんがあんなに嘆き悲しんでいる姿を目にしているじゃないか」
「だけど、私は本物のサファイアじゃないのに……彼女の記憶が無い私が戻っていいのいかしら……」
「だったらいっそアベルと一緒に暮らしたら?」
エメラルドさんがとんでもないことを言ってきた。
「そうだね。それもいいかもしれないね。この際、一緒に暮らしてみようか?」
魔法使いまで一緒になって頷く。
「え……? だけど、魔法使いは城の地下に幽閉……」
そこで私は肝心なことを思い出しかけたとき……。
「な〜んて冗談だよ。さて、それじゃエメラルド。僕達はそろそろ行くよ」
「ええ、そうね。ちゃんと送ってあげなさい。そうだわ、サファイア。何か困ったことがあったら私の名前を呼んで頂戴。貴女は私の数少ないお友達なんだから」
「それはとても嬉しいお話ですが……え? 送ってって……まさか……」
すると魔法使いがこちらを振り向くと、にっこり笑った。
「勿論、送るっていうのはサファイア。君の家にだよ」
「だ、だけど家になんて……」
けれど私が言い終わる前に魔法使いは指をパチンとならし、途端に目の前の景色が一瞬で変わった――
****
気づけば私は何処か見覚えのある場所に立っていた。目の前には四階建ての立派な屋敷が見える。
「あ……ここは……」
「そうだよ、ここはサファイアの家だよ」
声をかけられて振り向くと、至近距離でじっと私を見つめる魔法使いの姿があった。
眼鏡を掛けていない美しい魔法使いの顔が眼前にあり、思わず赤面する顔を見られない為に視線をそらせた。
「だ、だけどさっきも言ったけど、私はサファイアの記憶が全く無いのだから戻っても無理でしょう?」
「いや、それは多分大丈夫だと思うよ。それじゃ、ここでお別れだね。サファイア」
「え!? な、何それ! 何で突然お別れになるのよ!」
魔法使いの突然の言葉に当然驚く私。
「だって君はもう人間に戻れたんだよ? 当然僕との接点もここで終わりになるじゃないか」
「それは確かにそうだけど……!」
だけど魔法使いの秘密を知ってしまった今、呪いが解けたから「はい、さようなら」というわけにはいかない。
「君には本当に悪いことをしたと思っているよ。いくら事情を知らなかったとは言え、王子に命じられるままに呪いを掛けてしまったからね……」
申し訳無さそうに謝ってくる魔法使い。
「だって、それは王子に命じられたから仕方ないことだったのでしょう!?」
「そうだよ、でも君を危険な目に晒してしまった。血だらけになっていたサファイアを見たときには……心臓が止まるかと思った……」
「魔法使い……」
「だから僕は君に罪滅ぼしをするために、最高の舞台を用意してあげたよ。きっと満足行くと思う」
「え? それはいったいどういう……」
そこまで言いかけた時、魔法使いは再びパチンと指を鳴らし……私は再び魔法使いの声を聞きながら意識を失った。
『君に会えて良かったよ』
そんな……私達、もうここでお別れなの――?
私の言葉に魔法使いはコクリと頷く。するとエメラルドさんが尋ねてきた。
「それで? 無事に人間に戻れたサファイアはこれからどうするの?」
「え……?」
そう言えば、私は今後のことを一切考えていなかった。大体サファイアの記憶が何も無いのに、あの屋敷に戻るなんて……かといって、クロードの元へ戻るわけにもいかない。
すると魔法使いが当然のように言った。
「決まっているじゃないか。サファイアは屋敷に戻るんだろう? 実際お父さんがあんなに嘆き悲しんでいる姿を目にしているじゃないか」
「だけど、私は本物のサファイアじゃないのに……彼女の記憶が無い私が戻っていいのいかしら……」
「だったらいっそアベルと一緒に暮らしたら?」
エメラルドさんがとんでもないことを言ってきた。
「そうだね。それもいいかもしれないね。この際、一緒に暮らしてみようか?」
魔法使いまで一緒になって頷く。
「え……? だけど、魔法使いは城の地下に幽閉……」
そこで私は肝心なことを思い出しかけたとき……。
「な〜んて冗談だよ。さて、それじゃエメラルド。僕達はそろそろ行くよ」
「ええ、そうね。ちゃんと送ってあげなさい。そうだわ、サファイア。何か困ったことがあったら私の名前を呼んで頂戴。貴女は私の数少ないお友達なんだから」
「それはとても嬉しいお話ですが……え? 送ってって……まさか……」
すると魔法使いがこちらを振り向くと、にっこり笑った。
「勿論、送るっていうのはサファイア。君の家にだよ」
「だ、だけど家になんて……」
けれど私が言い終わる前に魔法使いは指をパチンとならし、途端に目の前の景色が一瞬で変わった――
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気づけば私は何処か見覚えのある場所に立っていた。目の前には四階建ての立派な屋敷が見える。
「あ……ここは……」
「そうだよ、ここはサファイアの家だよ」
声をかけられて振り向くと、至近距離でじっと私を見つめる魔法使いの姿があった。
眼鏡を掛けていない美しい魔法使いの顔が眼前にあり、思わず赤面する顔を見られない為に視線をそらせた。
「だ、だけどさっきも言ったけど、私はサファイアの記憶が全く無いのだから戻っても無理でしょう?」
「いや、それは多分大丈夫だと思うよ。それじゃ、ここでお別れだね。サファイア」
「え!? な、何それ! 何で突然お別れになるのよ!」
魔法使いの突然の言葉に当然驚く私。
「だって君はもう人間に戻れたんだよ? 当然僕との接点もここで終わりになるじゃないか」
「それは確かにそうだけど……!」
だけど魔法使いの秘密を知ってしまった今、呪いが解けたから「はい、さようなら」というわけにはいかない。
「君には本当に悪いことをしたと思っているよ。いくら事情を知らなかったとは言え、王子に命じられるままに呪いを掛けてしまったからね……」
申し訳無さそうに謝ってくる魔法使い。
「だって、それは王子に命じられたから仕方ないことだったのでしょう!?」
「そうだよ、でも君を危険な目に晒してしまった。血だらけになっていたサファイアを見たときには……心臓が止まるかと思った……」
「魔法使い……」
「だから僕は君に罪滅ぼしをするために、最高の舞台を用意してあげたよ。きっと満足行くと思う」
「え? それはいったいどういう……」
そこまで言いかけた時、魔法使いは再びパチンと指を鳴らし……私は再び魔法使いの声を聞きながら意識を失った。
『君に会えて良かったよ』
そんな……私達、もうここでお別れなの――?