私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?
5-7 人として初? の食事
この時間なら旦那様と朝食を一緒に取ることが出来ますと言われて、私は父のいるダイニングルームに案内された。
「おはようございます、お父様。遅くなりまして申し訳ございません」
自分で椅子を引いて腰掛けると、目の前に座っている父親を見た。
「……」
すると何故か唖然とした様子でこちらを見ている。
「あの? どうかされましたか?」
うぅ〜……丁寧な言い方をするのは……なんというか、背中がゾワゾワする。
「い、いや。驚いていたのだよ。まさかお前と一緒に朝食を取ることが出来るとは思っていもいなかったし……」
そして私を足のつま先から頭のてっぺんまで見渡す。
「お父様? どうしましたか?」
何? まさか……この身体の中身が全くの別人だと気づかれてしまったのだろうか?
内心の同様を隠しつつ、作り笑いを浮かべる。
「い、いや……サファイア。その服は何だね? どう見てもメイド服に見えるのだが……」
そう、実は私が今着ているのはメイド服なのだ。大きな違いと言えば、白いエプロンを着用していないだけである。
「はい、そうなのです。実は記憶喪失になったせいか、服の好みも変わってしまいました。部屋にあるドレスはどうしても着る気分になれなくて。そこでメイド服を着ることにしたのです」
いつの間にか私のテーブルの前には美味しそうな料理が並べられている。おお、 すごい! まるで一流ホテルの朝食メニューみたいじゃないの!
三ヶ月前までミドリムシやミルワームを食していた私に取って、フォークやスプーンを使って食事をする日がやってくるなんて……!
「い……頂きます!」
言うや否や、私は早速フワフワのオムレツを頂くことにした。スプーンですくって口に入れてみる。
「う〜ん……美味しい!」
思わず顔がにやけてしまう。すると父親が首を傾げる。
「いただきます……? 今の言葉は何だね?」
「あ、それは食事を食べるときに使う言葉でして……」
そこで気付いた。もしや、この世界には食事を食べるときには『いただきます』と言う言葉は存在しないのでは……?
「どうした? サファイア?」
「い、いえ。なんでもありません。それにしても美味しいお食事ですね〜。家族団らんの食事というのは」
誤魔化す為にパンを手に取り、バターを塗る。
「ああ、そうだな。何しろ家族は私とお前の二人きりだからな。これからは一緒に食事をしよう」
あ……やっぱりそうなのか。昨夜から思っていたことだが、サファイアには母親がいないんだ。普通三ヶ月半も行方不明になっていた娘が戻ってきたら、真っ先に出迎えてくれるはずなのに……姿を見せなかったのだから。
何となくしんみりした気分で焼き立てパンを食べていると、父親が声をかけてきた。
「ところでサファイア、明日……いよいよ決戦だ!」
「え? 決戦?」
聞き間違いだろうか? 何やらとてつもなく物騒な言葉を耳にした気がする。
「そうだ。決戦だ。明日、お前の元婚約者のギルバート王子が子爵令嬢との婚約お披露目パーティーを開催する。我々もそこに参加するのだ! お前がピンピンしている姿を見せつけて、一泡吹かせてやろうではないか!」
ダイニングルームに父親のエキサイティングな声が響き渡った――
「おはようございます、お父様。遅くなりまして申し訳ございません」
自分で椅子を引いて腰掛けると、目の前に座っている父親を見た。
「……」
すると何故か唖然とした様子でこちらを見ている。
「あの? どうかされましたか?」
うぅ〜……丁寧な言い方をするのは……なんというか、背中がゾワゾワする。
「い、いや。驚いていたのだよ。まさかお前と一緒に朝食を取ることが出来るとは思っていもいなかったし……」
そして私を足のつま先から頭のてっぺんまで見渡す。
「お父様? どうしましたか?」
何? まさか……この身体の中身が全くの別人だと気づかれてしまったのだろうか?
内心の同様を隠しつつ、作り笑いを浮かべる。
「い、いや……サファイア。その服は何だね? どう見てもメイド服に見えるのだが……」
そう、実は私が今着ているのはメイド服なのだ。大きな違いと言えば、白いエプロンを着用していないだけである。
「はい、そうなのです。実は記憶喪失になったせいか、服の好みも変わってしまいました。部屋にあるドレスはどうしても着る気分になれなくて。そこでメイド服を着ることにしたのです」
いつの間にか私のテーブルの前には美味しそうな料理が並べられている。おお、 すごい! まるで一流ホテルの朝食メニューみたいじゃないの!
三ヶ月前までミドリムシやミルワームを食していた私に取って、フォークやスプーンを使って食事をする日がやってくるなんて……!
「い……頂きます!」
言うや否や、私は早速フワフワのオムレツを頂くことにした。スプーンですくって口に入れてみる。
「う〜ん……美味しい!」
思わず顔がにやけてしまう。すると父親が首を傾げる。
「いただきます……? 今の言葉は何だね?」
「あ、それは食事を食べるときに使う言葉でして……」
そこで気付いた。もしや、この世界には食事を食べるときには『いただきます』と言う言葉は存在しないのでは……?
「どうした? サファイア?」
「い、いえ。なんでもありません。それにしても美味しいお食事ですね〜。家族団らんの食事というのは」
誤魔化す為にパンを手に取り、バターを塗る。
「ああ、そうだな。何しろ家族は私とお前の二人きりだからな。これからは一緒に食事をしよう」
あ……やっぱりそうなのか。昨夜から思っていたことだが、サファイアには母親がいないんだ。普通三ヶ月半も行方不明になっていた娘が戻ってきたら、真っ先に出迎えてくれるはずなのに……姿を見せなかったのだから。
何となくしんみりした気分で焼き立てパンを食べていると、父親が声をかけてきた。
「ところでサファイア、明日……いよいよ決戦だ!」
「え? 決戦?」
聞き間違いだろうか? 何やらとてつもなく物騒な言葉を耳にした気がする。
「そうだ。決戦だ。明日、お前の元婚約者のギルバート王子が子爵令嬢との婚約お披露目パーティーを開催する。我々もそこに参加するのだ! お前がピンピンしている姿を見せつけて、一泡吹かせてやろうではないか!」
ダイニングルームに父親のエキサイティングな声が響き渡った――