私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?

5-13 頼もしい助っ人

 すると――

ゴゴゴゴゴ……

突然大広間がぐらぐらと地震が起きたかの如く揺れ始めた。

「な、何だ!?」
「うわあああ!!」
「地震だわ!」
「た、大変だー!!」

ギルバート王子やクロードをはじめ、多くの人々が突然の大きな揺れに動揺している。

「モガーッ!!モガモガッ!」

猿轡を噛まされた父は芋虫のように床を這いずりまわっている。
ま、まさか……この揺れは⁉

するとその時――

ガシャーンッ!!
ガシャーンッ!!
バリーンッ!!

広間の窓ガラスが一斉に割れ始め、ますます会場内は悲鳴と怒声で大騒ぎになる。
そのとき――

『サファイアー!』

巨大なエメラルド色のドラゴン、略してエメドラ姿のエメラルドさんが窓ガラスを破壊しながら飛び込んできた。

「ウワアアアア!! ドラゴンだ!!」
「きゃああ! た、食べられる!!」
「逃げろ!! 食われるぞ!!」

人々はあちこちに逃げ惑い、中には腰が抜けたのか、床にへたり込んでしまった者もいる。

『サファイア! 助けに来たわよ! 何処にいるの!』

エメドラ姿のエメラルドさんは巨大な身体で床にドスンと降り立った。途端に人々の身体が10㎝程浮き上がり、着地する。

「エメラルドさん! こ、ここです!」

パニックに陥っている会場で私は必死に叫んだ。

『まぁ! サファイア! 一体その姿はどうしたの!』

エメラルドさんは逃げ惑う人々の中から、無様に転がっている私を見て大きな口をカパッと開けた。

「はい! そこの王子に縛り上げられました!」

ここぞとばかりに私は顎でギルバート王子をしゃくった。

『何ですって……?』

エメラルドさんはギラリと巨大な目でギルバート王子を睨みつける。ティアラとかいう女性は既に逃げ出しているようだった。

「ば、馬鹿! サファイア! お前、一体何を言い出すんだ!」

ギルバート王子の顔色が変わる。

「サファイア……? どこかで聞いた名前だ……」

一方のクロードは首を捻っている。けれど、今は彼に関わっている状況ではない。

「聞いてください! 彼が私を魔法使いに命じて蛙の呪いを掛けるように命じた張本人です! しかもその理由はとても自分勝手で、好きな女性がいるから私と婚約破棄したいがために、呪いに掛けさせたのですよ!」

「黙れ! サファイア! 衛兵! あのドラゴンを倒せ!」

ギルバート王子は震えている衛兵達に命じた。

「無茶言わないで下さい!」
「ドラゴンなど倒せるはずありません!」
「命が幾つあっても不可能ですよ!」

衛兵たちは震えながら口々に訴える。

本当に何処までギルバート王子は馬鹿なのだろう? ドラゴンを倒せる者がいるとすればドラゴンスレイヤーでも無い限り、無理に決まっているのに。……もっともこの世界にそのような者が存在するとは思えないけれども……。

『そこの人間……いい度胸しているわね? 千年を生きるこの私を倒そうとでも言うのかしら? しかも私の大切な友人サファイアを縛り上げるなんて……』

エメラルドさんは全身から怒りのオーラを発しながらギルバート王子を睨んでいる。

「サファイア……? それにドラゴンまで…‥‥ま、まさか……!」

突然クロードがハッとした顔つきで私に視線を移した――

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