私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?
5-16 目覚めた魔法使い
「あ、あ、あの……」
美しい顔のクロードに手を握られて、私はパニックになっていた。すると彼はフッと笑う。
「ギルバートから聞いたことがあるよ。自分にはサファイアと言う婚約者がいるけれど、とてつもなく傲慢で嫌な女だと。だから婚約破棄したいって」
「そ、そうですか……」
いくら自分が言われたわけでもないけれど、流石にへこむ台詞だ。
「馬鹿だな。ギルバートは」
「え?」
「君はこんなに美しくて、それに……とても優しくて勇敢な女性なのに……僕だったら絶対に君を手放さないのにな」
そしてクロードは私の手を持ち上げ、キスしてきた。
「え? え? え!?」
もう私の頭の中はすっかりパニックを起こしていた。何? 今の意味深な台詞と行動は!?
「サファイア、君はもうギルバートから婚約破棄されたんだよね?」
クロードが私の耳元で囁いて来る。
「は、はひ‥…そ、そのようですけど……」
心臓がバクバクして、口から今にも飛び出しそうだ。
「だったら僕が君の……」
そこまでクロードが言いかけた時――
「サファイアーッ!! アベルが! アベルが目を覚ましたわ!」
突如エメラルドさんの大きな声が背後から聞こえて来た。
「え!? 魔法使いが!?」
思わず振り向く。
「ええ、そうよ! まだぼんやりしているみたいだけど!」
「すぐ行きます!」
私はクロードの方を向くと、謝った。
「ごめんなさい! 私、彼のところに行ってきます!」
「え? サ、サファイア?」
クロードの目に戸惑いの表情が浮かぶも、私は背を向けると魔法使いの元へ向かって駆けだした――
****
「魔法使い!」
広間へ掛けこむと、ソファに寝かされた魔法使いの元へ駆け寄った。そばには父の姿と、一足先に戻っていたエメラルドさんの姿もある。
「あ……サファイア……」
ゆっくり起きあがった魔法使いは照れ笑いしながら私を見た。
「魔法使い……」
何故か魔法使いの顔を見た途端……目に涙が浮かんできた。そして気付けば私は彼の胸に飛び込んでいた。
「え? サ、サファイア?」
頭上で彼の戸惑う声が聞こえる。
「ば……馬鹿!! な、何であんな言い方するのよ……き、君に会えて良かったよ……なんて、最後のお別れみたいな言い方しないでよ!! ど、どうして会いに来てくれなかったのよぉ!」
私の目から涙が溢れて止まらない。何でだろう? いくらギルバート王子に命じられたからと言って、私を呪いに掛けた張本人なのに……どうしてほんの少し会えなかっただけで胸が苦しく感じたのだろう?
……どうして、彼の側にいると……心が落ち着くのだろう……?
「ごめん……サファイア。それに、僕を助けてくれてありがとう……」
魔法使いは私を抱きしめ、髪を優しく撫でてくれる。それが無性に嬉しかった。
「も、もうあんな台詞言わないでよ?」
涙を拭いながら魔法使いを見上げ……ふと気づいた。いつの間にかエメラルドさんも父もいなくなっている。
もしかすると、気を利かせて席を外してくれたのかもしれない。
「うん。分かった……もう二度と言わないよ」
にっこり笑う魔法使い。やっぱり彼は……悔しいくらいにイケメンだった――
美しい顔のクロードに手を握られて、私はパニックになっていた。すると彼はフッと笑う。
「ギルバートから聞いたことがあるよ。自分にはサファイアと言う婚約者がいるけれど、とてつもなく傲慢で嫌な女だと。だから婚約破棄したいって」
「そ、そうですか……」
いくら自分が言われたわけでもないけれど、流石にへこむ台詞だ。
「馬鹿だな。ギルバートは」
「え?」
「君はこんなに美しくて、それに……とても優しくて勇敢な女性なのに……僕だったら絶対に君を手放さないのにな」
そしてクロードは私の手を持ち上げ、キスしてきた。
「え? え? え!?」
もう私の頭の中はすっかりパニックを起こしていた。何? 今の意味深な台詞と行動は!?
「サファイア、君はもうギルバートから婚約破棄されたんだよね?」
クロードが私の耳元で囁いて来る。
「は、はひ‥…そ、そのようですけど……」
心臓がバクバクして、口から今にも飛び出しそうだ。
「だったら僕が君の……」
そこまでクロードが言いかけた時――
「サファイアーッ!! アベルが! アベルが目を覚ましたわ!」
突如エメラルドさんの大きな声が背後から聞こえて来た。
「え!? 魔法使いが!?」
思わず振り向く。
「ええ、そうよ! まだぼんやりしているみたいだけど!」
「すぐ行きます!」
私はクロードの方を向くと、謝った。
「ごめんなさい! 私、彼のところに行ってきます!」
「え? サ、サファイア?」
クロードの目に戸惑いの表情が浮かぶも、私は背を向けると魔法使いの元へ向かって駆けだした――
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「魔法使い!」
広間へ掛けこむと、ソファに寝かされた魔法使いの元へ駆け寄った。そばには父の姿と、一足先に戻っていたエメラルドさんの姿もある。
「あ……サファイア……」
ゆっくり起きあがった魔法使いは照れ笑いしながら私を見た。
「魔法使い……」
何故か魔法使いの顔を見た途端……目に涙が浮かんできた。そして気付けば私は彼の胸に飛び込んでいた。
「え? サ、サファイア?」
頭上で彼の戸惑う声が聞こえる。
「ば……馬鹿!! な、何であんな言い方するのよ……き、君に会えて良かったよ……なんて、最後のお別れみたいな言い方しないでよ!! ど、どうして会いに来てくれなかったのよぉ!」
私の目から涙が溢れて止まらない。何でだろう? いくらギルバート王子に命じられたからと言って、私を呪いに掛けた張本人なのに……どうしてほんの少し会えなかっただけで胸が苦しく感じたのだろう?
……どうして、彼の側にいると……心が落ち着くのだろう……?
「ごめん……サファイア。それに、僕を助けてくれてありがとう……」
魔法使いは私を抱きしめ、髪を優しく撫でてくれる。それが無性に嬉しかった。
「も、もうあんな台詞言わないでよ?」
涙を拭いながら魔法使いを見上げ……ふと気づいた。いつの間にかエメラルドさんも父もいなくなっている。
もしかすると、気を利かせて席を外してくれたのかもしれない。
「うん。分かった……もう二度と言わないよ」
にっこり笑う魔法使い。やっぱり彼は……悔しいくらいにイケメンだった――