【短】いろんな花があるけれど


「――大丈夫?」


そう頭上から声がして顔を上げる。

ちらちらと光に照らされる影――男子がかがみ込むようにして見下ろしてた。

やがて私と同じ視線に腰を下ろす男子。暗がりでも分かるほどの顔立ちにパッと胸の奥底で何かが弾けた。


まるで小さな花火のよう。

「なんで裸足なの」

語尾に(笑)がつく問いかけに答えることもせずただその綺麗な顔に見とれたのはほんの数秒。

「ちょっとした擦り傷で」

寝起きの一言目のような掠れた声で言う私に目の前の人は「それでか」と淡々と頷く。


いつの間にか立たされていつの間にか手を引かれてるこの状況に戸惑いを隠せないまま明るみに出た。


目の前に広がるのはずっと探してた屋台通りの一角。

そして小さな椅子に促されて座った。


「戻ってこれた」

ふいに出た安堵の音に男子が「よかったね」と笑う。


「ありがとう、ございます。親たちと外れちゃってずっとこの場所探してたの」

「そんなとこだと思った。よかったね」

「はい」

会話はそこで途切れてしまった。


初対面じゃこんなもんだよななんて思いながら視線は隣にいる人を盗み見ている。

綺麗な、横顔。鼻がスっと高くて、フェイスラインが……。

うっとりしてしまう。こんな綺麗な人この世に存在するんだ。一般人だよね。芸能人とかじゃないよね……?


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