【短】いろんな花があるけれど


賑わう音があるのに私たちにしかない世界にいるようなそんな静けさの中。

ふたつの音が重なった。


お互いにそっぽ向いて着信相手を対話する。


《花今どこ!?てかやっと繋がった!どこにいるんだよ。もう動くな?今そっち向かうから!場所は?》

兄の焦燥と安堵の声が右耳を貫く。
謝って場所を伝えると直ぐに通話が途絶えた。


一方、大学生さんは。


「あー?うん、あ〜。いいんじゃね?――いや、なんでだよ!……ったく」

私より長く話してるから見ているといろんな表情を浮かべる彼がおもしろくて。


「なに笑ってんの」

いつの間に終えてたようで口をとがらせて迫る彼に焦りながら身を引いた。

近すぎじゃありませんか?美形すぎる!

また速まる鼓動に無理やりにでも箱にしまおうとする。押さえつけても脈を感じるくらいまだ高鳴るこの胸。


やだ。なんか私おかしい。知らない人なのに。
美形だからって。


「電話は親からだった?」

「あ、いえ。アニデジタ」

「ふは、なんでそんなカタコト」

ぶぼぼぼと顔に熱が集中した。

なんかやばいぞ。なんだこれは。美形が笑うとこんなにも眩しいなんて。それになんか――。



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