【短】いろんな花があるけれど


「「いた!ハナ!」」

そう呼んだのは兄ともう一人の男の人。

おそらく大学生さんの友達。

兄は走ってきたのか息が上がってて、隣の人はゆったりとしてこちらを見下ろしてた。

「マージで探したッ、すんません妹がお世話になったみたいで。ほら、おぶるから」

兄は私の隣にいる大学生に頭を下げてから目の前で背を向けた。

ちょっと!人前で!!

なんて言っちゃいたいけど、大学生さんの前だからといつものようにはいかせてくれない自分がいて。

黙って兄の背中に身を預ける。


よいしょとおんぶなんかされてきっと笑われてる。だって高校生でもいくらなんでもこれはちょっと……。妹でもちょっと……。

そんな心情には気付かず兄は私をおぶりながら再び2人に向き直って会釈した。

私は前を見ることすら出来なかった。


踵をかえす兄が一歩踏み出すとため息ともうひとつ声がして私は首だけ後ろに振り向く。


「またね!」

そう言って手を振る美形大学生さん。

軽く会釈して前を向く。


どきん。どきん。

ドックンドックン。


箱から溢れるほどの光の屑がばら撒かれた気がした。

その一つ一つに光が弾ける。次々と着火されていく。


まるで、花火みたく胸の奥からいろんな色した花が弾けていく。



「なにしてんだよ、ほんと」

「……うん ごめん」

「で、あいつ誰」

「……しらない。知らない大学生」



――ハナツカ メグル



さっきそう叫ばれた、気がした。

ううん。叫ばれた。でもなんで。



でもきっと忘れない。

彼の名前には私の好きな “ハナ” が入ってるから。




いろんなハナがあるけれど


きっと私は、


あなたの一番好きな “ハナ” になる気がする――。











END.
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