【短】いろんな花があるけれど
「なっちゃんは?」
お昼ご飯を頂きながらそう尋ねたのはおじいちゃん。
なっちゃんとは私の兄だ。
「夏なら明日には来るんじゃないかな」
お父さんがそう言うと待ち遠しそうにビールを飲んで「楽しみだな〜」って呟く。
おじいちゃんと兄は大の仲良しで。まるで親友のような間柄。釣りしに行ったり虫取りに行ったり、おじいちゃんは兄を見つけるたびにどこかに引っ張り出して外出していた。
昔からずっとそんな感じ。
兄は一時期避けてたこともあったけどねー。
なんの心変わりがあったのかそれっきり嫌々付き合うことも無くなってた。
みんなの他愛ない話を聞きながら私も素麺を頬張る。
「――そういえば明後日お祭りよね」
お母さんが壁にかかったカレンダーを見ていった。
「そうよ。みんなで行ってらっしゃい。今年は雨降らないし、花火上がるよ」
――花火。
その言葉だけが頭の中を支配する。
「はーちゃん行く気満々ね」
「そりゃもちろん!」
「ははっ、ほんと好きね花」
そう。私が食いつくのはいつも花なのだ。
自分の名前と関係があるからという理由まではいかないけれど、物心ついた時から私はいつも花が付くものになんでも食い付いてきた。
――私は花が好きなのだ。