【短】いろんな花があるけれど


淡いピンクの生地に白い大きなお花がメインのこの浴衣はあまり自分らしくなくて恥ずかしい。

ピンクなんて柄じゃない。どちらかというとダークな方。せめて紺色がよかった。仕方ないお母さんのお下がりだからこれしかないんだもの。

小さく息を吐く。

だんだんと周りが賑やかになっていくのを肌で、耳で感じ取る。

咄嗟に兄の裾を掴んだ。


「ん?」

「あ、ごめん。ちょっとよろけた」

「ああ、歩き慣れないもんな。いいよ掴んでて。――あ、それともこっちがいい?」

いたずらに笑って私の手を取る。

いつぶりだろう。兄と手を繋いだのは。相変わらずドライな手だなと思った。

「やだ。こっちでいい」

するりと解いて再びシャツの裾を握る。


「ふっ、かわいくねー妹だな」

その一言にブチッときた私は兄の頭を叩いてお母さんには注意されて、何故かお父さんと手を繋ぐことになってしまった。


嬉しそうに花を咲かせる父と青ざめる私。

こうなるんだったら兄と手を繋いでいた方がよかったなと思いながら人混み溢れる屋台に吸い込まれるのだった。


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