【短】いろんな花があるけれど


さて。どうしようか。

簡潔にいうと、はぐれた。


oh......。


数分前まで長い屋台通りを離れないとくっついてたのに。いつの間に家族が私から居なくなった。

神隠しとでも思いたいくらい。


ほんとすぐ数分前、数秒前にはいたんだ。

ちょっと兄から手を離した隙にこうなってしまった。


「ちょっとまじで……」

電話かけようとしたけれど電波が届かないのか繋がらない。え、田舎だから?

そんなのきつすぎでは。

あんまりだ。ここ暗いし。どこか分からないし。探し回ってたら訳分からない所に出てきてしまったもんだから。


「えーまじどうしよ……」

とりあえず来た道戻ってみるかな。


「痛っ」

向きを変えると足元に激痛が刺さった。

どうやら下駄――先つぼで指の間を切ってしまったらしい。脱いで確認すると痛々しく赤みを帯びていた。

絆創膏持ってきてないや。あらら。

もう一度足を通すけれど激痛に激痛が増して結局裸足で歩く。

来た道を辿ってるはずなのにちっとも屋台の明るみが現れなくてなんか泣きそうになってきた。

本当にはぐれた。このままずっと独りなのかな。このまま――。


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