【短】いろんな花があるけれど
不意に胸を貫く轟音と降り注ぐ光が現れた。
瞬時に花火だと察知する。
見上げると大きな花が色とりどり舞っていた。
「わぁ」
幼心が蘇ったような嬉々した声が誰もいない森の中にふわり放たれる。
綺麗。大きい。綺麗。すごい。
そんな言葉しか出てこない。
永遠と煌めくその花に心を奪われる。
そう。たくさんある花でも私は花火が好き。
これを超えるほどの花ってあるのかな。
「――ハナ!」
轟音紛れに届いた声に咄嗟に反応する。
兄の声じゃない。でも男子。私を呼んでる……?
なんて酔いしれた頭で聞こえてきたと思われる方へ歩んだ。