【短】いろんな花があるけれど
近づくにつれて声が少し増えてくる。
もしかしたら屋台通りに出られるのでは?なんて思ったけれど香ばしい匂いなどするわけがなくて。
一体こんな暗い森の中で何をやっているのだろう。
迷い込んだ私が更に迷い込んでしまう程の森の中へ進んでいくと声がパタリと止んだ。
「え……」
怖くなって声が出る。
さっきまで聞こえてたはずなのに。え、怖い怖い。まさかの幻聴、? は、それとも……。
身を縮こませながらも一旦止まった足は再び前へ進む。なぜだろうと思う。でも体が勝手に進んでるんだ。不思議。
自分が歩くことで奏でる葉を掠める音を安定剤代わりに更に先を行く。
ふと何かが視界に入った。
キラリと光る何か。
暗いけど少しばかり花火の光が届く時にその光は一段と強く光って見える。
好奇心に掻き立たされた。
歩む速度を速める。ズカズカ進むとだんだんと影が見え始めた。
木に寄りかかった黒い影。間違いなく人間。光って見えたのは、あれはピアスだろうか。
今度は恐る恐る歩幅を縮めた。
音を立てないように。慎重に。だけどパキッと足元でなって痛がる微かに放った声で「やばっ」と傍で声がした。
男子だ。
声の感じからしてそう思う。
カサっとなる方へ視線を向けると黒い影が遠ざかっていくのが見て取れた。