無自覚姫は今日も美形集団を纏わせる~男子視点 真空との出会い~
あれは、豪雨が襲い掛かった日だった。




朝、通学してきたときは晴れていて。




傘なんて、持っていなかった。




どうしよう、と。




いつも余裕で過ごしている俺にしては珍しく、焦っていた。




スマホの天気アプリには今日はもう雨やまないって書いてあるし・・・。




「・・・あの」




「・・・え?」





俺のコトを知っている人なんて、謎の部活・動画作成部の3人しか知らない。





だって俺は・・・授業は受けていないし、テストは部室で受けているから。




自分の顔が整っている自覚はあるし、でも今はマスクに眼鏡で顔を隠している。




「傘、ないんですか?」
  



振り返ると、そこには『学園のアイドル』と呼ばれる美少女がいた。




透明な傘を差し、首をかしげている・・・向埜鳥真空(こうのとりしんく)





「あぁ・・・ちょっとね」





なんで声を掛けたんだろう、と不思議に思っていると。





「あの・・・良ければこれ、どうぞ。使ってください」





真空はカバンからカーキ色の折り畳み傘を差し出していた。





「私はこの通り傘を持っていますし・・・傘を差さずに帰ったら風邪をひきますよ。この傘・・・もう使い道がないので、よければそ





のまま貰っちゃってください」





「えっ・・・」





そのまま・・・という彼女に、気を遣っている様子はない。





「ありがとう・・・ありがたく、使わせてもらうね」





「はいっ・・・気を付けて帰ってくださいねっ」






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