無自覚姫は今日も美形集団を纏わせる~男子視点 真空との出会い~
「先生」





鈴を転がすような、凛とした声。





静かだけどしっかり通ってて、声だけで美人だってわかる。





「こ、向埜鳥(こうのとり)・・・!」





どうやらこの子は向埜鳥ちゃんというらしい。





向埜鳥ちゃん・・・コウちゃんでいっか。





「あの、その資料私が持っていきますよ。今から準備室のほうに行こうと思ってましたし、ちょうどいいので」





「いいのか?」





「もちろんです。先生もお疲れでしょう?毎日お疲れ様です。できるだけ早く帰って、しっかり休んでくださいね」





教師をねぎらうコトも忘れない、コウちゃん。





いい子ぶってるようには見えないし、瞳は純粋だ。





「じゃあ頼むな!内申点は期待していいぞ!」





教師は機嫌よさそうに去って行って、コウちゃんは上品に笑いながらそれを見送っていた。





「・・・さて」





コウちゃんがこっちを見る。





「大丈夫ですか?」





「・・・え?」





「早く帰りたいんでしょう?なにか用事があるのか・・・あ、この資料は私に任せてください」





そう言って振り返ったコウちゃんは想像通り・・・いや、想像以上に美人だった。





これは・・・天使で間違いない・・・?





「あ、私は真空(しんく)。よろしくね」





「あ、よろしく・・・」





名乗るコトはできないけど僕は変装の下で真っ赤になっていた。





へ、変装しててよかったっ・・・。





「じゃあさようなら。また逢えるかな」





コウちゃん・・・真空ちゃんはニコニコと笑ったまま階段を上り、伸びた背筋は見えなくなる。





「向埜鳥、真空・・・」





声に出して名前を紡ぐ。





「真空ちゃん・・・キミは、僕が見つけた」





僕は諦めなんてしないよ?





だから・・・大人しく僕に捕まっててね。





僕は、人生で初めて手に入れたいものを見つけた。




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