亡命した貴族令嬢は隣国で神のような愛に包まれ、名家奪還の大逆転を遂げます!
14.女神様
「フロリアン、貴女のお屋敷はカアラプシャン難民地区にあります」
いつの間にか馬車の中でウトウトしていたら、モニカに起こされました。
「……難民地区?」
「そう。ベリューム公爵が大掛かりな事業を行って整備したライクス王国内のカアラプシャン街よ」
「父が建設した街ですか?」
私は、莫大な負債の中身が見えてきた気がしました。
「そうね。難民が多いから、お父上様は難民を救った偉大な指導者として知られているの。この地区でベリューム家と言えば、神様のような存在だから、貴女も熱烈に歓迎されると思うわ。びっくりしないでね」
そう言われてもピンと来ません。これまで父のお仕事をかなり手伝ってきたつもりなのに、私の知らないことがあるのだと思うと、少々寂しい気分になります。しかし、そんな感傷に浸る間もなく、すぐに現実に引き戻されました。
「難民地区に入ったわ」
「あ……」
沿道には多くの民衆がライクス王国とカアラプシャン国の国旗を振りながら、私たちが乗っている馬車に向かって歓声を上げています。「フロリアン公爵令嬢、大歓迎!」と書かれた横断幕も見えます。
「な、何でしょうか!?この騒ぎは!?」
「だから言ったでしょう。貴女は神様なのよ!」
私は目の前で起こっている現象が夢なのか現実なのか判断しかねるほど信じられない光景に遭遇しています。
だって、つい先日まで奴隷のような存在だったのですから!
***
やがてベリューム公爵家のお屋敷へ到着しました。相変わらずの人だかりです。それに、これだけ多くの難民がいることにも驚きました。
私たちが馬車から降りると、さらに大きな歓声が上がり、中には涙を流している女性やお祈りしている紳士が見えました。キャーという黄色い声援も聞こえてきます。
えっと、そこまで歓喜する!?
「お美しいです!フロリアン様!」
「まるで女神様のようでございます!」
……い、いえいえ。私は平々凡々な女性です。決して美しくもなく、ましてや女神様などと言われても困ります。
私が困惑していると、赤ん坊をおぶった女性が現れました。
「フロリアン様、この子を抱いていただけませんか?お願いします!」
「は、はい……」
私は小さな赤ちゃんを抱いて、ヨシヨシしてあげました。
「とっても可愛らしいわ」
「あー!幸せでございます!フロリアン様、ありがとうございました!」
女性は嬉しさのあまり涙を浮かべています。
……あのね、私に抱っこされたからってそんなご利益があるわけじゃないし、そこまで感動されるほどのことではありませんよ。
とにかく私はこの状況に全く馴染めていませんが、次に難民の代表者と思われる御老人から挨拶をされました。
「お嬢様……ああっ、お会いできてとても光栄です。私は難民地区の自治会を運営していますコンサラットと申します。また、ベリューム家の管理も任されております」
「初めまして、フロリアンです。生前は父が大変お世話になったようで……ありがとうございました」
「と、とんでもありません!世話になったのは、我々十万人を超す難民です!」
「じ、十万人?」
私は父の偉大さを改めて感じました。これだけ多くの難民を亡命させるには、困難を極めたであろうライクス王国との折衝や、亡命者が犯罪に手を染めないよう、住まいや仕事の生活基盤を整備するなど、難民のために大変尽くされたのだと推測します。
つまり、父はカアラプシャン人に生きる希望を与えたのです。
そして、今後は私がこの事業を引き継ぐことになるかもしれません──
いつの間にか馬車の中でウトウトしていたら、モニカに起こされました。
「……難民地区?」
「そう。ベリューム公爵が大掛かりな事業を行って整備したライクス王国内のカアラプシャン街よ」
「父が建設した街ですか?」
私は、莫大な負債の中身が見えてきた気がしました。
「そうね。難民が多いから、お父上様は難民を救った偉大な指導者として知られているの。この地区でベリューム家と言えば、神様のような存在だから、貴女も熱烈に歓迎されると思うわ。びっくりしないでね」
そう言われてもピンと来ません。これまで父のお仕事をかなり手伝ってきたつもりなのに、私の知らないことがあるのだと思うと、少々寂しい気分になります。しかし、そんな感傷に浸る間もなく、すぐに現実に引き戻されました。
「難民地区に入ったわ」
「あ……」
沿道には多くの民衆がライクス王国とカアラプシャン国の国旗を振りながら、私たちが乗っている馬車に向かって歓声を上げています。「フロリアン公爵令嬢、大歓迎!」と書かれた横断幕も見えます。
「な、何でしょうか!?この騒ぎは!?」
「だから言ったでしょう。貴女は神様なのよ!」
私は目の前で起こっている現象が夢なのか現実なのか判断しかねるほど信じられない光景に遭遇しています。
だって、つい先日まで奴隷のような存在だったのですから!
***
やがてベリューム公爵家のお屋敷へ到着しました。相変わらずの人だかりです。それに、これだけ多くの難民がいることにも驚きました。
私たちが馬車から降りると、さらに大きな歓声が上がり、中には涙を流している女性やお祈りしている紳士が見えました。キャーという黄色い声援も聞こえてきます。
えっと、そこまで歓喜する!?
「お美しいです!フロリアン様!」
「まるで女神様のようでございます!」
……い、いえいえ。私は平々凡々な女性です。決して美しくもなく、ましてや女神様などと言われても困ります。
私が困惑していると、赤ん坊をおぶった女性が現れました。
「フロリアン様、この子を抱いていただけませんか?お願いします!」
「は、はい……」
私は小さな赤ちゃんを抱いて、ヨシヨシしてあげました。
「とっても可愛らしいわ」
「あー!幸せでございます!フロリアン様、ありがとうございました!」
女性は嬉しさのあまり涙を浮かべています。
……あのね、私に抱っこされたからってそんなご利益があるわけじゃないし、そこまで感動されるほどのことではありませんよ。
とにかく私はこの状況に全く馴染めていませんが、次に難民の代表者と思われる御老人から挨拶をされました。
「お嬢様……ああっ、お会いできてとても光栄です。私は難民地区の自治会を運営していますコンサラットと申します。また、ベリューム家の管理も任されております」
「初めまして、フロリアンです。生前は父が大変お世話になったようで……ありがとうございました」
「と、とんでもありません!世話になったのは、我々十万人を超す難民です!」
「じ、十万人?」
私は父の偉大さを改めて感じました。これだけ多くの難民を亡命させるには、困難を極めたであろうライクス王国との折衝や、亡命者が犯罪に手を染めないよう、住まいや仕事の生活基盤を整備するなど、難民のために大変尽くされたのだと推測します。
つまり、父はカアラプシャン人に生きる希望を与えたのです。
そして、今後は私がこの事業を引き継ぐことになるかもしれません──