亡命した貴族令嬢は隣国で神のような愛に包まれ、名家奪還の大逆転を遂げます!

17.素敵な夢

「侵略とは言っても、軍隊の派遣は最終手段だ。まずは貿易を全て停止させ、渡航制限を行って圧力をかけようと思う」
「殿下、それだけでも三ヵ月あればカアラプシャン国は干上がってしまいます」
「うん、そこで降伏してくれれば手荒な真似をせずに済む。全面戦争になれば、我が国にも犠牲者が出るからね。……ただし、もし歯向かうならリスクを覚悟でやる。僕は容赦しない」

なるほど、この圧力は宣戦布告のようなものですね。

「この件について、カアラプシャン国の由緒ある公爵令嬢のご意見を伺いたい」
「ライクス王国の圧勝だと思います。それが前提なら殿下はカアラプシャン国を植民地にして、どのような統治をお考えですか?単なる資源搾取や民衆の奴隷化なら私は賛成しかねます」
「属国として扱うが、礼儀礼節を尽くすつもりだ。現国王や皇族は追放するけどね」
「カアラプシャン人を迫害しないのですか?」
「迫害なんてとんでもない。僕はあの国をライクス王国のようにしたいんだ。フロリアン、君にも手伝ってほしい」

ちょっとお待ちください。その前に、先程の意味不明な発言の真意を突き止めなければなりません。

「殿下、その……それと私との婚約はどう繋がっているのでしょうか?」

殿下は私の手を握ったまま、しばらく窓から見える宮殿を眺めていました。そして、不意に熱い眼差しを向けてきたのです。

「僕は貴族院の時から君に惹かれていた」
「それはどう考えても不自然でございます」
「信じてもらえないかもしれないが、本当だ」
「殿下とは一度もお話ししたことはありませんし、私のような地味な留学生の存在すらお気づきにならなかったかと思いますが?」
「カアラプシャン国から来た大人しい公爵令嬢は、いつも窓から見える景色を眺めていた。しかし君はライクス王国の生徒を差し置いて常に優秀な成績を収めていた。僕はそんな君に興味を持った」

……それは単に隣国から来た不気味な留学生に興味を持ったに過ぎないのでは?

「話には続きがある。貴族院を卒業した僕は、陛下の命で外交主宰という大役を頂いた。右も左も分からず途方に暮れていたよ。しかし、そんな僕に手を差し伸べてくれたのがベリューム公爵だったんだ」
「えっ、父が!?」
「隣国でありながら、外交について多くを学ばせてもらった。僕が今あるのは君の父のおかげと言っても過言ではない」
「そのようなお話は聞いたことがありません」
「機密な内容もあったからね。……で、ここからが本題だ。ベリューム公爵はよく君の話をしていた。国を想う気持ちが素晴らしく、それに自身も影響されていると言っていた」
「はあ……」

具体的にどんな話をされたのか気になりますが、早く確信にたどり着きたいので質問は控えます。それで?

「僕はそんな理念を持った君にますます惹かれていった。そして、自分の夢を見つけたんだ。君の住むカアラプシャン国を豊かで平和な国にしたいと。それはベリューム公爵からの願いでもある」
「……それは素敵な夢だと思います」

少々感動しています。だって、その夢は私の夢でもあったからです……

「だから、愛する君と一緒に成し遂げたい。フロリアン、僕と結婚してほしい!」

──い、いえいえ!だから結婚って言われても、俄には信じられませんよっ!
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