亡命した貴族令嬢は隣国で神のような愛に包まれ、名家奪還の大逆転を遂げます!

20.追放

リュメルは不安そうに私の顔を見つめています。自国の危機に直面して、なぜかライクス側にいる元正妻に助けを求めているのでしょうか?

確かに私はカアラプシャン国出身で、公爵家の者ですが、今は助けたくありません。リュメルが嫌いだからではなく、カアラプシャン国は根本から変わる必要があるのです。一度崩壊させて再生するしか手はありません。それが民衆のためだと信じています。

「フロリアンも閣下に言いたいことがあるのでは?……僕は席を外すよ」
「えっ?」
「あとは君に任せる」

そう言って、殿下は会談の途中で退出しました。ここに残っているのはモニカとリュメル、スカーゲン、それにライクス王国の護衛が数人だけです。

もしかしたら、殿下は私に復讐の機会を与えてくれたのでしょうか。でも、国家を語る場で個人的な恨みを晴らすのはどうかと思いますが……物は言いようです。

「リュメル……様、国家の一大事です。観光などなさらず、そこの政治秘書とお戻りください。そして陛下にご報告と進言をなさっていただけませんか?」
「フロリアン、一体何を進言するというのだ?」
「ライクス王国は本気です。このままでは国は崩壊します。悪あがきして戦争などしても全く勝ち目はありませんので、ライクス王国に降伏するとお伝えください」
「こ、降伏だと!?」
「カアラプシャン国はライクス王国の属国として再生するのです」
「そ、そんなこと言えるわけがない!」
「現体制では国を豊かにすることはできません。民衆はいつまで経っても苦しむだけです。だから密入国を繰り返すのです。そんなことも分からない呑気な皇族に国の政治を任せるわけにはいきません」
「ち、ちょっと待て、では我々はどうなるのだ?」
「……追放します。どこかのお国で野垂れ死んでください」
「追放……!?野垂れ死!?あ、いや、僕は皇族ではあるが、今はベリューム家を継いでいる。厳密に言えば公爵家の者だ。だから僕はこのままで助かるんだよな?」
「貴方も外交主宰ですから、追放の対象かと」
「そ、それはないだろう。なあ、フロリアン、僕らは別れたとは言え、一度は結婚した仲じゃないか。君から殿下にお願いしてくれよ」

──はあ!?どの口からそんなことが言えるのですか!ふざけないでください!

「リュメル様、私は貴方を絶対に許しません!ベリューム家との縁をお断ちになり、お屋敷からとっとと出ていきなさいっ!」

私は感情を抑えきれませんでした。リュメルは口をパクパク開けて驚いています。

「……フロリアン。……許してくれ、僕が悪かった。だから……」

リュメルが頭を下げていたその時、モニカが私の手を握り、リュメルに向かってアゴをしゃくりました。
ああ、そういうことですか……はしたないですが、このままでは気が済みません。元正妻として、殴らせていただきます。

──パシーーン!

「男らしくしなさい!リュメル!」
「ひっ……!フロリ……」
「ついでにお前も!よくも騙したな、スカーゲン!」

──パシーーン!

「ううっ……た、助けてください、フロリアン様」

「いいえ、許しません!お前たちは即刻お帰り!そして一ヶ月以内に降伏宣言をするのよ!それまではお前の愛する公妾たちを人質に取ります!」
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