亡命した貴族令嬢は隣国で神のような愛に包まれ、名家奪還の大逆転を遂げます!

21.お仕置き

「やるじゃない、フロリアン」
「モニカ……私、初めて人を殴りました」
「どうだった?」
「思ったより爽快でした」
「うふふ、癖になりそうでしょ?」
「……はい、スッキリしました」
「それでは、残りの公妾たちを処分してやりましょう。手筈は整えておいたから、行きましょう」
「えーと、どちらへ?」
「面白いところよ」

リュメルとスカーゲンはその後、逃げるように出国しました。詳細を知らされていないへクセたちは、訳が分からないまま兵士に取り押さえられ、地下牢に監禁されていました。

私たちは兵士を引き連れ、薄暗くて汚れた地下牢に向かいました。すると、牢番に文句を言っている声が聞こえてきます。

「ちょっと、どういうことなのよ!私はカアラプシャン国外交主宰の秘書よ!訳もなく牢屋にぶち込んでタダで済むと思ってるの!?早くここから出して頂戴!ねえ、あなた、聞こえてるんでしょ!」

牢番は何も言わず背を向けていますが、やがて私たちに気づき、一礼しました。一方、へクセたちは話ができる高官が来たと思い、怒りと期待を込めた表情で何やら叫んでいます。ところが……

「お静かに!」

──パシャン!パシャン!

モニカはいつの間にか棒に革紐を取り付けた、いわゆるムチを持っていました。それを何度も床に叩きつけます。

「ひっ……」

牢屋にいるへクセとモッペルは驚き、私も少々引いています……

「お前たち、状況が分かっていないようだから簡単に説明するわ。……我が国はリュメル閣下にある任務を命じた。その成果が確認されるまで、お前たちを人質として捕らえている。以上!」

「ひ、人質ですって!?な、何の任務なのよ?いつまでかかるの!?」
「お前たちが知る必要はない」
「じゃあ、それが終わるまで、こんな薄暗くて汚いところで待ってろって言うの!?冗談じゃないわ!」

「──屋根裏も最初は汚かった。薄暗くて埃っぽくて絶望的な気分だったわ」
「……えっ!?」

モニカの後ろに立っていた私は、そろそろ出番かと思い前に出ました。決着をつける時です。

「お久しぶりです。へクセ、モッペル……」
「お、お前は誰……!?」
「あら、私をお忘れになって?」
「ん?……あっ、あーーーーっ!お、お前はフロリアン!」
「な、何でお前がここにいるんだ!?」

私は彼女たちの問いには答えず、牢番に声をかけました。

「牢番さん、鍵を開けていただけますか?」
「えっ?よ、よろしいのですか?」
「兵士もいますから大丈夫です」

私の指示に従い、牢番が鍵を開けると、へクセとモッペルは牢屋から飛び出してきました。どうやら釈放されたと勘違いしているようです。

「フロリアン!助かったわ!」
「……助けてなどいません」
「えっ?どういうこと!?」
「牢屋にいたら殴れないでしょ?」
「はい!?」

──パシーン!パシーン!

私はいきなりへクセに平手打ちを二発しました。へクセは一体何が起こったのか分からず呆然としています。

さて、とことんお仕置きさせていただきますわ!
< 21 / 23 >

この作品をシェア

pagetop