亡命した貴族令嬢は隣国で神のような愛に包まれ、名家奪還の大逆転を遂げます!
カアラプシャン国編

23.大逆転

あれから一月が経ち、カアラプシャン国はついに降伏を宣言し、リュメルを含む皇族たちは追放処分となりました。彼らがどこへ行ったのかは知りませんが、正直、それはどうでもいいことです。

それよりも、新たな統治者としてゲーニウス殿下が選ばれたことに喜びを感じています。

私は嬉しくて、宮殿の執務室でモニカとささやかなお祝いをしていました。そこで殿下が驚きの発言をされました。

「カアラプシャン国を統治するにあたり、僕はノルトハイムという皇族の名前ではなく、あの国で伝統のある名前に変えたいと陛下にお願いして、ご承認いただいた」

「殿下、それって……」
「フロリアン、僕を婿養子にさせてくれ」
「えーーーーーーーーーーーーーっ!?」
「ゲーニウス・ベリューム大公として、カアラプシャン国を治めたいんだ」
「た、大公ってグランドデューク!?……公爵より上位をベリューム家が名乗るのですか!?」
「そうだ。フロリアンは大公妃として」

い、いえいえ、私が大公妃だなんて!

私が動揺していると、殿下はそっと肩に手を置かれ、眩しいご尊顔を近づけてこられました。思わず私は恥ずかしくて目を背けてしまいます。

「二人で理想の国を作っていきたい。フロリアン、共に歩んでくれないか?」
「あ、あの、殿下?もう一度確認しますが、私はその……平々凡々な女性でございます。殿下に相応しいとは思えないのですが……」
「君はとってもチャーミングだよ」

だから、そんなことありませんって!

「僕は君の全てを愛している。本気だ。だからそれを証明するためにも、君とカアラプシャン国を必ず幸せにする!」
「あ……」

殿下が私の顔に手を当てられています。私はどうしたら良いのか分かりません。例によって体が固まってしまいました。怖くて目を閉じたので定かではありませんが、殿下の唇が私の唇に触れた感覚が伝わってきました。気絶しそうです!

どうしても、どうしても殿下が私を愛しているという事実を信じることができません。でも、もういいです。殿下と共に祖国の幸せを築いていけるなら、それで十分です。

「殿下に一生ついていきます!」

***

カアラプシャン国にあるベリューム家のお屋敷に到着しました。懐かしい我が家です。一足先に戻っていたデイーナが出迎えてくれました。

「お嬢様、いえ、今はフロリアン大公妃様、お帰りなさいませ」
「ああ、ようやく帰ってきた、このお屋敷へ!」

私は少々感傷に浸ってしまいました。このお屋敷で契約結婚を宣言された時から始まった不遇なストーリーを思い出しながら……でも今にして思えば、亡命したからこそ、大逆転を遂げて取り戻したのです。

しかも、新たなお婿さんまで連れて。

私、フロリアン・ベリュームは、大好きなご主人様、ゲーニウス大公を支え、この国を理想の国家へ導いて行きたいと存じます。では、ご機嫌よう──

         ──完──
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