初恋 〜この夏は、キミのために〜
※※※
商店から自転車で20分かけて到着した大病院。
502号室へ行きいつものように引き戸をノックした。
「はい、どうぞ」
入室の許可が出ると、いつものように病室へ入った。
「旭くん、いらっしゃい」
「よ、よっ。毎日来てるけど、ホントに良いのか?」
「もちろん。私が来て欲しいって言ったんだよ? おかげで最近すごく楽しいんだから」
初めて会った時と比べて彼女は最初から笑顔を浮かべるようになった。
仲良くなった証のようで、旭は嬉しく思っていた。
いつものように椅子に腰掛け、面会時間の間でたわいない話をしていたのだが、旭は内心気が気ではなかった。
(いつ港祭りに誘おう……帰り際に誘う……? 返事を聞く前に帰る自信しか無いな……でも、今聞いて、断られたら……気まずいよな)
「旭くん?」
「えっ!?」
旭が頭の中で色々と考えている時に話しかけられていたようで、雅の何度目かの呼びかけにようやく応対した。
「ご、ごめん。考え事してて……」
「ううん、謝らないで。病室でただ話してるだけなんて、旭くんにとってはつまらないよね」
眉をハの字にして困った表情を浮かべる雅に、旭は勢いよく首を横に振った。