初恋 〜この夏は、キミのために〜
キミのために
※※※
2週間後。
港町唯一の大病院の一室で、大きなため息を吐く雅。
通知のない寂しいスマホの画面を何度もつけたり消したりを繰り返していた。
(旭くんに嫌われちゃったよね……)
病気であることを告白したあの日の旭の顔は、今でも鮮明に覚えている。
「はぁ……」
窓際で頬杖をつきながら外を眺めていると、中庭がいつもより騒がしいことに気付き、視線を落とした。
目を向けた先に驚き、目を丸くした。
中庭では、複数の屋台が組み立てられていたのだ。
そして、その中心にいる人物に驚いた。
「あれって……えぇっ!?」
慌てて病室の窓を開けると、外の会話がよく聞こえた。
「翔兄ちゃん、俺はあっちの手伝いしてくるから! こっちを頼む!」
「オッケー。旭張り切ってんなー」
「そりゃあ、2週間前から準備してたから。絶対楽しんでもらいたいんだ」
(楽しんでもらいたい……? そっか。旭くんは、誰かのために頑張ってるんだ……)
2週間前までの楽しかった思い出が、脳裏に色々と浮かんできた。
胸がきゅっと締め付けられた。
「楽しんでもらいたい、か。ところで旭」
「ん?」
翔が顔を上げると、雅と目が合った。