初恋 〜この夏は、キミのために〜
「楽しませたい張本人にバレてるけど」
翔の言葉にこてんと首を傾げ同じように顔を上げると、雅と目が合った。
「み、雅ちゃん!?」
中庭から離れた病室にも聞こえる大きな声。
雅は、ただ目を丸くするしかできなかった。
驚いていると、雅のスマホが振動した。
「旭くん……だ」
ずっと連絡が欲しかった旭からで、胸を高鳴らせながら通話ボタンを押した。
「も、もしもし……」
『雅ちゃん、悪いんだけどさっき見た物は忘れてくれない?』
「えっと……屋台のこと?」
『わー……やっぱり見られてたよな……』
姿を見ながら電話をするのは新鮮だったが、声音通りに落ち込んでいる旭が見えた。
そんな旭に「何やってんだよー」など色々茶化す声が電話越しに聞こえた。
旭が色々な人に愛されていることが目に見え、「ふふっ」と笑みが溢れた。
『ほんとは昼過ぎくらいに雅ちゃんにサプライズで伝えようと思ったんだけど……』
「私に……?」
嫌われたと思っていた相手からの意外な言葉に、驚いた。
『雅ちゃん、夏祭りに行ったことないって言ってたから。ぜひ、楽しんでもらいたいと思ったんだ』
「覚えててくれたんだ……」
『もちろん。あと少しで準備できるから、もう少しだけ待ってて』
「うん……!」
旭の言葉に素直に頷き、電話を切った。