初恋 〜この夏は、キミのために〜
「母から旭さんと藤田さんが病院まで連れてきてくれたことを聞いてましたから」
藤田とは、翔のことである。
しかし、名前を2つ聞いていたにも関わらず初対面の相手の名を当てたことを疑問に思った。
「でも、俺が藤田の可能性もありましたよね? なんで、俺が旭って分かったんですか?」
あの日、旭はとにかく一生懸命だった。
しかし、あのような状況に遭遇したのは初めてのことで、翔の指示の元で動いていた。
病院に到着して手続きなどをしたのも翔である。
それなのに、旭のことがすぐに分かったのが意外だったのだ。
「ふふ、私を助けてくれた人でとても一生懸命な派手髪の人がいたって。その人が旭って呼ばれていたことも教えてもらったんですよ?」
眉間にシワを寄せて怪訝そうな表情をしている旭につい笑みが溢れた。
旭が、ハッとしたように自分の頭を抑えた。
旭は、髪を脱色しており派手な金色。
派手髪と言われることもよくあった。
「あぁ、それで……情けなくて本当に申し訳ないです」
「どうして?」
彼女の大きな瞳が、旭をじっと見つめる。
美少女から視線を向けられたことなどない旭の顔に熱が集まった。