歌集 無言歌 I
ドトールでコーヒー相手に「バカ」っていう善管注意義務なら捨てた



榴弾はお取り扱いしてません代わりに募金箱がこちらに



ネクタイをむしり取ろうぜネクタイはただそのために結ぶのだから



鬨の声高くひびけよガード下始発を待つなら泣いてはいけない



おれたちの限界効用逓減の法則破るかんぱいの声



ブラックとホワイト混ぜたカフェオレはどちらに戻れもしないから好き



中華街の娼館の路地を駆け抜けてハレムの産科に居ついた風です



夜明け前ニトロちろちろ舐めてますたったひとりで生きると決めて



世が世なら手打ちにしていたところだが武士の情けでミュートで許す



結び目の固いこととは誰だってほどけなくても切れはすること



上野発富良野行きならここでいい乗るなら急いで理由を忘れろ



銀輪を駆って飛びこめスコールへバカにはバカの泣き方がある



カルーアで作れるレシピは一〇〇近くでもさブラック作れないよね



下半期斬新なこと始めましょビリーズブートキャンプですとか



記憶とか名声なくすまで飲んで朝焼けあおいでひとりになりたい



かなしみの数だけ受けた剃刀をみんなはどこに溜めて生きるの



花咲かす談笑もなしに相部屋のカーテンは閉じ孤食のあさげ



味噌汁をペットボトルで売ってくれおにぎり全品温めてくれ



感情をことばに頼るな感情を便利に使うな辞書など捨てろ



忘れてもいいし知らなくてもいいあなたをまいにち祈るひとなど
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