千瀬垣くんの所有物には絶対ならない!
第一章:プロローグ
***
こんなにも理不尽なことって、他にあるだろうか。
「──キミだよね?今日から俺のお世話係に任命された子って」
名だたる有名人やお金持ちが住んでいるというこの地区の中でも、特に目立っているタワーマンションの最上階。
壁一面がガラス張りになっていて、外から見る景色はまさに絶景そのもの。
「お、お世話係!?違います!私はただ、週に2回、ここであなたの話し相手になってあげてほしいと頼まれただけで……」
そんな高級マンションに1人で住んでいる、彼の名前。
千瀬垣 優世──。
日本屈指の資産家、『千瀬垣家』のたった1人の御曹司。
千瀬垣くんと私は同じ高校に通っていて、そして今日から……私のバイトの雇用主となる人。
「えー。でもさぁ、キミ……じゃなくて彩加ちゃん、だっけ?」
「は、はい。南野 彩加です」
「彩加ちゃんはさ、俺のじいさんに頼まれてここに来たんだよね?」
「そう、です……けど」
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