千瀬垣くんの所有物には絶対ならない!




そして、今日がそのアルバイトの初日。


実際に千瀬垣くんの家に『顔合わせ』としてやって来て……今に至る。





「彩加ちゃんが今日ここに来たのはさ、俺の爺さんから直々の頼みごとのせいでしょ?」

「あの、それは……」

「あの爺さんの頼みごとを聞く理由っていうのはさ、なにか見返りがあるからだよね?きっと相当ななにかを得られるんじゃない?違う?」

「……っ」



客間だと思われる広い部屋に置いてある大きなソファに、気怠そうに肘をつきながら座っている千瀬垣くん。

まるで私を吟味しているかのような視線が容赦なく突き刺さる。





「爺さんからいったい何をもらえんの?金?権利?コネ?」

「……っ」

「あぁ、違った。彩加ちゃんのお父さんの会社……和菓子屋だっけ?潰れそうだけど援助してもらうんだってね。大変だねぇ」





学校では、いつだって千瀬垣くんが放つ言葉に、行為に、仕草に、みんなが目を向けて、耳を傾けて、一喜一憂する。

千瀬垣くんは間違いなく私たち2学年の中で、いや、全学年の中でトップに君臨する人物だ。




私はそんな彼がずっと苦手だった。

同じ学校に通ってはいるけれど、なるべく関わらないように、平凡に過ごしていく予定だった。




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