運命の相手に出会いたいとわめいたら出会ってしまった夜
「今月、最後に会った男は俺だよね。だから俺が運命の人」
「なにそれ」

 また笑おうとしたけど、真剣な仰木くんの顔があって笑えなくなってしまった。

「お前が真面目に仕事してるところも、マンガの話して笑ってる姿も、なにもかも俺には運命だから」
「日本語がおかしいよ」

「うるさいな、告白に文句言うなよ」
「告白!?」

「これからは俺にときめけよ」
「……無理」

「そのわりには顔が赤いけど?」
 挑発的に言われて、ばっと顔に手を当てる。頬が熱い。

「あの……私……」
「いいよ、返事はしなくて。必ず好きにさせてやるから」

 私は呆然と彼を見た。
 にやり、と彼は笑う。

 直後、私は悟った。

 平凡な日常が運命に変わる瞬間を体験してしまったのだと。

 きっと。

 私はどきどきと目を伏せる。

 仰木くんの言う通り、明日からは彼にときめいてしまうのだろう。

 雲から姿を現した月は、ただ明るく私たちを照らし出していた。






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