悪役令嬢なママを城内アイドルにします~歌って踊れるお妃様育成物語~
私は視線を巡らせてマルセルたちを見つめた。
フーリアがこちらに手を振っている。

その目が輝き興奮しているのがわかるけれど、マルセルたちの手前遠慮がちになっているみたいだ。

私はまだざわめく会場内へと視線を巡らせた。
私が長く見たかった光景が、ここにある。

「エメラルド様。そろそろ今日のパーティがなんなのか、説明してもらおうか」

マルセルの側近がよく通る声で言った。
その一言で会場内の熱が一度下がったのがわかった。

突如現実へ引き戻されて文句を言う声もちらほら聞こえてくる。
私はステージの真ん中に立つと、コクリと頷いた。

「みなさま、今日は突然の催し物に参加していただきまして、ありがとうございます」
たどたとしく、だけど懸命に言葉を紡ぐ。

あかちゃん言葉が出てしまわないように、丁寧に。
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