利害婚~閉じ込められてきた令嬢の初恋~
 両親は自分のことを疎み、双子の妹ばかり可愛がっていた。その理由は明確で、今ならばある程度仕方がないと割り切れたのかもしれない。だが、あの頃は寂しかった。

 寂しくて、苦しくて、辛くて……。

 その所為で暴走してしまって、余計に疎まれて。悪循環に陥っていた。

「誰でもいいから、愛してほしかったわ」

 目を瞑って、そう呟く。

 もう顔も思い出せない両親と双子の妹。彼らは今、なにをしているのか。ついに、自分のことを見捨てたのだろうか――と、思っていたときだった。

 部屋の外でどたどたという数人の足音が聞こえて来た。重たい瞼を開けるものの、空腹から身体は起こせない。

「ここももぬけの殻です!」
「こっちもです!」

 どうやら、この建物に入ってきた人物は全員男性らしかった。その声と歩き方から、大体わかる。

「一応、全ての部屋を捜索するように。……万が一、隠れられていたら困るからな」

 絶対零度とも呼べそうな、冷たい声が耳に届いた。その声には感情なんてちっともこもっていない。まるで感情を邪魔のものだと思い、削ぎ落したような声だと思った。

 しかし、それよりもお腹が減ってたまらない。またぐぅと弱々しく主張をするお腹を押さえれば、部屋の扉がガタガタと音を鳴らす。
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