線香花火のようなあの夏の恋

「大丈夫、近くの全然人が来ない個人店の方行くから！あそこ小さいお店だけど、新刊なら豊富に揃えてあるの！」



少し心配そうなお母さんに「すぐ帰る！」と残して家を出る。



思った通り、お目当ての新刊はまだいくつか残っていて、一冊だけ購入する。


早く帰って続きを読もうとウキウキで本屋を出ると、ちょうど目の前を通り過ぎようとしていた人と思いっきりぶつかってしまった。



「わ…っ」



その拍子に転びそうになるが、ぶつかった相手が咄嗟に手を伸ばしてくれてなんとか体勢を立て直す。



「ごめんなさい！大丈夫です…」



か、と言おうとしたが、その言葉はひゅっとどこかに消えてしまった。



「うわ、またおまえかよ」