線香花火のようなあの夏の恋
「まあいいや、早く帰ろ」


「…え!?なんであんたと帰らないといけないの!」


「家近いんだし別にいいだろ。遅いと置いてくからな」



スタスタと歩き出してしまった梶くんを慌てて追いかける。


遅かったら置いてくとか言ったくせに、ちゃんと隣を歩く私の歩幅に合わせてくれている。



「…ムカつく」


「は?」


「まだ出会って二日なのに、あんたには私の素を全部見せてる自分がムカつく!」



そうだ。私は人に素を見せることが苦手なくせに、どうして梶くんにはこんなに普通に接してしまうんだろう。



「意味わかんな…。猫被ってないってことだから、いいことなんじゃないの?」


「こんなの初めてだもん…。私、人と仲良くなるのが苦手なの。無意識に壁を作っちゃうから」
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