線香花火のようなあの夏の恋
「もう、ほっといてよ…！誰と仲良くしたって私の勝手でしょ！なんで速水くんみたいなチャラ男にそんなこと言われないといけないの！」



食べかけのお弁当もそのままに、教室を飛び出す。


…わかっている。この恋が簡単なものじゃないことくらい、私が一番わかっている。



「あんた、図書室の前で何してんの？」


「いや、だって今中に間宮さんと梶くんがいるから。なんかあの二人の空間に入っていいのか躊躇っちゃってさ…」


「あーわかるかも。あの二人、美男美女だしお似合いだよねー。付き合うのも時間の問題」



図書室の前でそんな会話をしている女子生徒二人の前を通り過ぎながら、胸がちくんと痛んだ。


“お似合い”。私と梶くんでは、きっと言われないような言葉。



…そうだ、忘れていたけど梶くんには夏希ちゃんがいる。


小さい頃から当たり前のように隣にいれて、きっと誰よりも梶くんの色んな顔を知っている。
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