線香花火のようなあの夏の恋
「愛菜、どうしたの?急にぼーとすること増えたけど」


「カナちゃん…。ごめん、本当になんでもないの。ちょっと疲れちゃったのかな」



あははと笑顔を作るけど、きっとカナちゃんには無理して笑っていることなんてバレているだろう。



「愛菜ちゃん、ちょっといい?」



速水くんが普段見せているチャラチャラとした笑顔ではなく、真剣な顔で私の元にやってきた。


不思議そうにしているカナちゃんになんでもないことを伝えてから、廊下に出る。



「愛菜ちゃんが集中できてないの、俺のせいだよね…。さっきはごめん。でも、本当に愛菜ちゃんを心配して言ってるだけなんだ。色んな俳優とかモデルがちょっとしたことでもすぐに報道されちゃう時代でしょ?せっかく有名になってきたところなのに、そんなので愛菜ちゃんの人生が滅茶苦茶になるなんて俺だって嫌から。一ファンとしてね」


「…ううん、速水くんの言う通りだと思う。私、友達もいないし素を出して話せる人も、梶くんが初めてだったの。…この気持ちも、初めてだったの…」



私は、きっと梶くんに恋をしてはいけない。
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