線香花火のようなあの夏の恋
梶くんが一本を私に手渡してきて、火をつけてくれた。



「どっちが長く保てるか、勝負しよ」


「え?」



梶くんがパチパチと燃えている火を指差して、にっと笑った。



「先に落ちた方が負けな。負けたやつは勝ったやつの言うこと一つ聞く、とか」


「楽しそう。私が勝つと思うけどね」


「はは、どうかな」



真剣に火を見つめている梶くんの横顔を、チラリと盗み見る。



…私のこの恋は少しだけ線香花火に似ているかもしれない。


綺麗だけど儚くて、ちょっとした拍子にすぐ落ちて終わってしまうような…そんな危なげな初恋。
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