線香花火のようなあの夏の恋
「愛菜、落ちてる」


「え?」



ハッと我に返ると、私の火の玉はいつの間にか落ちてしまっていた。


梶くんのは、と思って隣を見ると、梶くんのもちょうど静かに落ちたところだった。



「俺の勝ち、だな」


「う…っ、ボーとしちゃったんだもん。そうだ、もう一回!もう一回や…」



ろ、と言おうとしたのに、梶くんにそっと腕を掴まれてその言葉はどこかに消えてしまった。



「梶くん…?」


「勝ったやつの言うこと聞いてくれるんだろ?」



梶くんがゆっくりと顔を近づけてきて、私はまるで石になってしまったかのように身動きが取れなかった。
< 53 / 100 >

この作品をシェア

pagetop