線香花火のようなあの夏の恋
「…あ」



トイレを出ると、ちょうど前を通り過ぎた梶くんと鉢合わせた。



「…愛菜、さっきの…」


「ご、ごめん、私急いでるから」



ダメだ、今梶くんに会わせる顔なんてない。


好きな人がいるのに違う男の子とキスをしてしまったのだから。



逃げるように梶くんに背を向けて足早に去る。



「あ、愛菜ちゃん、次のシーンなんだけど…」



話しかけてきた速水くんをじっと睨んで、そっぽを向く。


こうなったのも、全部速水くんのせいだ。
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