線香花火のようなあの夏の恋
速水くんは何も答えられない私に「今のは忘れて」と呟き、指定された位置に行ってしまった。


私は、演技中もずっと速水くんの言葉が頭から離れなかった。





「愛菜、聞いてる?」


「…え?」



窓の外をぼーと眺めていると、運転席からカナちゃんが声をかけてきた。



「あ、ごめん…なんだっけ?」


「今日も私の家に帰るでいいんでしょ?って」


「うん。雑誌の撮影長引いちゃったもんね…」



上の空で何度も撮り直しをしたために、今日は終わるのが遅くなってしまった。


心なしか体も疲労で重い気がする。
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