線香花火のようなあの夏の恋
この夏 –運命だと思えた恋–
「愛菜が家にいるのなんて久しぶりねー。佳菜子のとこばっかじゃなくて、ちゃんとうちにも帰ってきてよね」


「ごめんごめん。お盆あたりは多分帰ってくるよ」



朝ごはんを急いで食べながら、そろそろ迎えにくるであろうカナちゃんに備えて身支度をする。



この一年で、私は女優としての仕事がぐんと増え、モデル業とも両立させながらいくつかテレビ番組にも出演させてもらったりと、順調に忙しい毎日を過ごしていた。


今日は一年前に撮った映画の公開初日&舞台挨拶がある。


舞台挨拶は生中継でネット配信もされるそうだ。



「お父さんも愛菜に会いたい会いたいうるさいのよ」


「あはは、今海外出張行ってるんだっけ?仕事熱心なとこはお父さんに似たのかな」


「そうね、でも愛嬌とか整ってる顔はお母さん似じゃないかしら?」


「自分で言ってて恥ずかしくないの?ほら、愛菜。そろそろ行くよ」



いつの間にか家に入っていたカナちゃんががしっと私の頭を掴んできた。
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