線香花火のようなあの夏の恋
運転をしながら、ミラー越しに私を見てカナちゃんがふふっと思い出し笑いをしていた。



「愛菜のママは素直じゃなかったからねー。何回も妹の私のところにまたやっちゃったって泣きついてきてたのよ。でも、今では夏が来るとあの出会った日のことを思い出すって惚気てくるくらいには素直になったねぇ」



夏が終わり、秋が来て、冬が来て、春が来て、また夏に戻ってきた。


夏が終わっても私はあの人を、梶くんを忘れた日なんて一度もなかった。


もう消えたとばかり思っていたこの気持ちは、今もまだ私の中でじわじわと火を灯し続けていた。



だからこそ、仕事を理由にあまり家に帰ってこない日が増えて梶くんとももう一年顔を合わせてすらいない。



「愛菜ちゃん、久しぶりー。っつても、このまえのドラマ共演以来だから言うて一ヶ月ぶりくらい?」


「そうだね。もう速水くんの顔見飽きたよ」



速水くんとは一年前のあの映画の主演以来から、なぜか共演することが増えた。


何回も顔を見合わせている速水くんとは、今もずっと友達をやらせてもらっている。
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