線香花火のようなあの夏の恋
絢斗は昔から今も、ずっと私のヒーローで…初恋の男の子だ。


だから絢斗の隣にはずっと私がいられるって、そう信じていた。



「愛菜もこっち来いよ。それとも水鉄砲も使ったことない?」


「はあ!?ちょっと、なめないでよね。スナイパーの役だってやったことあるんだから!」



もう何年も一緒に過ごしてきたのに見たことがないくらいの優しい顔で笑って、一人の女の子を見つめる絢斗に胸がちくんと痛んだ。


私はあんな笑顔を向けられたことなんて一度もない。



悔しかった。ずっと絢斗の隣に当たり前にいられたのは私だけだったのに、ある日突然現れた女の子があっという間に絢斗の隣も心も全部簡単に奪っていってしまったから。



「こんなところにいたの、絢斗。ノート取りにいくだけでどれだけ時間かけてるの」



必死に二人の邪魔をしようとしているこんな醜い自分に、嫌気がさした。


せめて、高城さんの性格が悪かったら「実はこんな人なんだよ」って絢斗に言えたのに。
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