線香花火のようなあの夏の恋
「…結局、その程度だったんだ。あなたが羨ましい」



絢斗に想ってもらえる女の子は高城さんだけだから、羨ましかったんだ。


私にチャンスなんてこれっぽっちもないくらい、絢斗は高城さんだけを見ていることを知っていたから。


誰よりも近い距離にいれる幼なじみは、誰よりも好きな人からは遠いから。



私じゃ、絢斗の隣にはずっといられないから…。



「絢斗」



屋上で寝転がりながら空をボーと眺めていた絢斗が、ゆっくりと私を振り返った。


きっと絢斗が待っていた人は私じゃない。



「あのね、聞いてほしいことがあるの」


「…なに?」
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