線香花火のようなあの夏の恋
佳菜子さんが早業で渋る愛菜を変装させた。



「じゃあ絢斗くん、この子頼んだわよ。愛菜ったら、絢斗くんに早く会いたいからって、仕事二時間巻きで終わらせてきたのよ。たっぷり遊んであげて」


「ちょ、カナちゃん!それは内緒って言ったでしょ!」



赤い顔をして頰を膨らませている愛菜の手を愛しく思いながらきゅっと握る。



「愛菜、花火買ってきたよ」


「えー!本当だ!やろうやろう!私、まだ今年一回もできてなかったんだよねー」



嬉しそうに笑顔を咲かせる愛菜にふっと笑いがこぼれ、その小さな手を引っ張って近くの土手沿いに移動する。



「ここらへんは穴場スポットで全然人がいないから、変装してなくても大丈夫だと思うよ」


「ふー暑かった」



さっさと変装を解いた愛菜が早速花火の袋を子どものように目を輝かせながら開けていた。
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