生徒会のお姫様は無自覚に魅了する~男子校に入学しました~
「・・・失礼します」
不機嫌オーラを出しながら職員室に入る。
「あっ・・・あなたが黒姫(くろき)さん?」
眼鏡をかけた女性が私に歩み寄ってきて、私は頷いた。
「はい、今日からお世話になります。黒姫月です」
頭を下げ、印象を良くしようと微笑む。
「まぁ・・・可愛らしい。さぁ、こっちよ」
海渚(みなぎ)先生というらしい先生は、厳しそうに見えたけどなんか甘かった。
「男子校になりつつあるシュラナ学園に来てくれて嬉しいわ。じゃあ私が呼ぶまで廊下に居てくれるかしら?」
「もちろんです」
1年Zクラスと書かれた札が下がる教室の前で先生は立ち止まり、大人な笑みを浮かべた。
Z、って・・・ジーニアス(天才)のコト?
「さて、今日からこのクラスに編入生が来ます。入ってきてちょうだい」
先生は廊下にいる私に視線を向け、促す。
「せ、先生が笑ってる・・・」
「どんな奴なんだ?めっちゃイケメンとか?」
「え、生徒会の推薦で来た女子って聞いたけど・・・!」
全員男子生徒の声。
そりゃまぁ、男子校になりつつあるからね。
さ、やりますか・・・!
決意を固めて教室の中に入る。
「ぅおっ・・・なにこの天使!」
「女子だ!噂って当たるコトあるんだな・・・!」
「私語は慎みなさい!」
騒いだ男子は先生に叱られ、押し黙っていた。
「はじめまして、黒姫月です。よろしくおねがいします」
教卓の前で頭を下げ、教室を見渡す。
・・・うわ。
昊優(こう)居るわ。
まじかー・・・とりあえず・・・。
『総長!』と昊優の口が動く。
視線で黙らせると、昊優は察したような顔をして頷いた。
「分からないコトはなんでも訊いてちょうだい」
席はあそこよ、と指差された席に向かって歩く。
なんと、昊優の隣だった。
一番後ろの席で、右に昊優。
左には・・・ニコニコと余裕な態度で私を見る男子。
チュリにはこんなメンバーいなかったよね・・・。
「昊優、教室では月って呼んで」
「そ、そ・・・む、(むうん)・・・」
顔を真っ赤にしながら小さな声でいう昊優に微笑み、私は左に視線を向ける。
「あなたは?」
「あ、俺は真白海(ましろしい)。よろしくね」
爽やかくんは海というらしい。
「よろしく、海」
「うわ、呼び捨てで呼んでくれんの?嬉し」
ホントに嬉しそうに笑う海に私は笑みを向けたまま、視線は教卓に。
「では1限目の教科書を──」
先生の声で私はそっちに意識を移し、カバンから教科書類を出した。
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