爽やかなイケメンくんに翻弄されています。
隣を見ると、プリントに乗った消しカスを払っているところだった。
払った時に消しゴムが手にぶつかってしまい、わたしの机まで転がってきたらしい。
取ってあげようと消しゴムに手を伸ばす。
コツンと一ノ瀬くんの手とわたしの手が触れた。
驚いて慌てて手を引っ込める。
ほんのちょっと手が触れただけなのに、顔がカーッと熱くなる。
「ご、ごめん。」
咄嗟に謝ったけれど、顔を上げられない。
これだけで顔が赤くなるなんて……。
からかわれたら嫌だしこんな赤くなった顔、恥ずかしくて一ノ瀬くんには見せられないよ……。
「俺の方こそごめんね。でも、ひよりちゃんと手が触れてラッキーだったな〜。」
どこか、からかうように一ノ瀬くんが言う。
一ノ瀬くんに言われると、さっきのもだけど、昨日のことも思い出しちゃうよ……。
昨日、手をぎゅっと握られたことを思い出す。
でも、すぐに頭からかき消した。
押し黙ったままのわたしに痺れを切らしたのか、頭上から言葉が降ってくる。
「ひよりちゃん、顔を上げてくれないの?」
少し悲しそうな声をしている。
でも……。
「い、いじわるばかりしてくる人には、顔を見せません……。」
俯いたまま言うと、すぐ近くでクスクスと笑い声が聞こえた。
「えー。俺、耳まで真っ赤にしちゃう可愛いひよりちゃんの顔が見たいんだけど。」
可愛いの一言に心臓がドキンと大きな音を立てる。
そんなことを言われたら、ますます顔を上げられないよ……。
しかも、顔が赤いことバレてるし……!
でも、このままやられっぱなしなのは嫌だな。
そんなことを思う。
いつもだったらこんなこと絶対に思わない。
でも、このまま一ノ瀬くんに翻弄されてばかりなのもなんだか嫌だった。
思い切って顔を上げる。
思った以上に一ノ瀬くんとの距離が近くて驚く。
それでも、わたしは意を決して口を開いた。